ロケットガールの誕生

コンピューターになった女性たち
表紙
ナタリア・ホルト 著
秋山文野 訳

ISBN 978-4-8052-0923-3

四六判/456頁

3,500+税


概要

第二次大戦中、陸軍からの援助を受けていたカリフォルニア工科大学ジェット推進研究所(JPL)では、ロケットエンジンの噴射速度や飛翔体の経路を計算するのに数学や数値計算に堪能な人材が必要になった。そのとき採用されたのは数学や物理を修めた若い優秀な女性たち。彼女たちは「コンピューター」(計算手)と呼ばれ、紙と鉛筆、それに数学的能力を駆使してロケットを設計し、アメリカで最初の弾道ミサイルの打ち上げに貢献した。彼女たちは、単に単純な計算を行っていただけでなく、計算過程を整理し、計算方法を改良し、より効率のいい方法を開発していた。つまり彼女たちは最初のプログラマーだった。

やがて、JPLがアメリカ航空宇宙局(NASA)の組織の一部になったとき、女性コンピューターたちは、月、金星、火星を目指す惑星探査の研究開発の担い手となった。人間の代わりにデジタル計算機(いわゆる「コンピューター」)が使える時代になると、最初のコンピューター・プログラマーとなり、コンピューター・エンジニアとなった。そうした彼女たちの努力によって、太陽系の惑星探査は実現した。やがて彼女たちは、後に続く女性研究者、エンジニアの先駆けとなっていく。 本書『ロケットガールの誕生』は、「コンピューター」として宇宙開発を支えただけでなく、逆境をはねのけ、自らの道を切り開いていった彼女たちの物語であると同時に、黎明期の惑星探査の熱狂とそこに携わる人々の情熱を鮮やかに描き出している。

著者

ナタリア・ホルト(Nathalia Holt)
サイエンスライター。南カリフォルニア大学、テュレーン大学、ハンボルト州立大学で学び、マサチューセッツ総合病院ラゴン研究所、マサチューセッツ工科大学、ハーバード大学などで研究職に就いていた。サイエンスライターとして、これまで『ニューヨーク・タイムズ』、『ロサンジェルス・タイムズ』、『アトランティック』、『ポピュラー・サイエンス』、『タイム』などに数多くの記事を寄稿。また、JPL(ジェット推進研究所)アーカイブ、カルテク図書館、ハーバード大学のシュレシンガー図書館などでも執筆活動を行っている。著書は、本書のほかに『完治――HIVに勝利した二人のベルリン患者の物語』(岩波書店、2015)などがある。

秋山文野(Ayano Akiyama)
サイエンスライター、編集者、翻訳者。現在はBUSINESS INSIDER JAPAN、sorae.jp、JAXA などに、宇宙開発分野を中心に日本の宇宙開発、海外宇宙ビジネス、宇宙開発史などの記事を寄稿。著書は『図解ビジネス情報源 入門から業界動向までひと目でわかる 宇宙ビジネス』(アスキー・メディアワークス 2011 年)、『“JAXAの真田ぁ〜ず”に聞く「はやぶさ」7年60億km のミッション完全解説』(アスキー・メディアワークス 2010 年)などがある。

目次

 一九五八年一月 打ち上げの日
  アメリカ初の人工衛星/軌道計算と周回確認/「あの子がやったわ!」

第T部 1940年代
 第1章 上へ、上へ、そして遠くへ
  JPLを作った決死隊/最初のコンピューター(計算者)/飛行機用の補助ロケット/
  JPLの誕生/飛行実験/コンピューター室の5人/フリーデン計算機/噴出速度の計算
 第2章 西海岸を目指して
  日中戦争による移住/コンピューター募集/就職先でコンピューターになる/
  コンピューターの結婚と出産

第U部 1950年代
 第3章 ロケットの夜明け
  打ち上げ実験/弾道ミサイルの経路計算/女性コンピューターと男性エンジニア/
  女性だけのコンピューター室/射場の移動/マッカーシー旋風/
 第4章 ミス誘導ミサイル
  美人コンテスト/初のアフリカ系アメリカ人コンピューター/ロケットエンジンの失敗/
  コンピューターという機械/IBMの電子計算機/慣性誘導航法/結婚と仕事
 第5章 足踏み
  フォン・ブラウンがJPLへ/国際地球観測年/人工衛星の開発/ヴァンガード計画/
  コンピューターの恋愛/弾道ミサイル計画/砂袋の打ち上げ
 第6章 九〇日と九〇分
  ジュノー計画の中止/ソ連の人工衛星スプートニク/ヴァンガードの失敗/
  アメリカ初の人工衛星エクスプローラー/ヴァンガードの成功/計算速度競争
 第7章 月の輝き
  アメリカ航空宇宙局(NASA)の発足/月探査計画/真空管式電子計算機/
  プログラミングと計算機/パイオニア探査機/ディープ・スペース・ネットワーク

第V部 1960年代
 第8章 アナログの大君
  コンピューターの退職/トランジスタ式電子計算機/レインジャー計画/
  コンピューターの復職/マリナー計画/FORTRANによるプログラミング/
  パンチカード/キューバ危機/マリナー2号
 第9章 惑星の引力
  火星探査/ケネディ暗殺/コンピューターからプログラマーへ/レインジャー7号の成功/
  送られてきた火星の画像/二度目の復職/サーべーヤー計画/アポロ計画
 第10章 最後の宇宙女王
  イパネマの娘/月面着陸/マリナー6号の火星探査/惑星直列とグランドツアー/
  コンピューターからエンジニアへ

第W部 1970年代〜現代
 第11章 火星から来た男
  アポロ13号/マリナー10号の金星・水星探査/グランドツアーの継続/アポロ計画の終了/
  スカイラブ/スペースシャトル/バイキング計画/火星表面の探査/ボイジャー計画
 第12章 少女のように
  ボイジャーによる木星・土星探査/ヴェガ探査機/ガリレオ探査機/チャレンジャー号事故/
  マイクロ・プロセッサー/パーソナル・コンピューター/カッシーニとホイヘンス/
  マゼラン探査機/火星ローバーによる探査

 エピローグ
  再会/その後のコンピューターたち