太陽系旅行ガイド
概要つい最近の“宇宙ツアー”では、人工衛星などの軌道まで行かない宇宙飛行の価格は一座席数千万円ぐらいだ。宇宙へほんとうに行くには――「ほんとうに」と言うのは、上へ上がってすぐ降りてくるだけの旅ではなく、地球を軌道周回し、数日ではなくとも数時間は無重力を経験するということ――数十億円ぐらいかかる。ポケットマネーという額ではない。これらはどちらも普通の人々には手が届かないかもしれないが、それでもこのような商業的宇宙計画によって、訓練を受けていない一般人が宇宙へ行く手段を初めて買うことができるようになった。しかし、今のところは、ほとんどの人は想像力の中に慰めを探さなければならない。著者マーク・トンプソンが子供時代や「宇宙飛行士」を夢想したことを振り返り、それを今日の意味合いで見ると現実に起こる旅であり、報告であり、発見であると言えるようになった。宇宙や宇宙空間について今日まで学んできたことすべてをもってして、太陽系を回り惑星を順に訪れている自分を思い描くと、それはどのような旅になるだろう? 何を見て、何を経験するのか? 本書はそんな旅に関するものだ。原著A SPACE TRAVELLER'S GUIDE TO THE SOLAR SYSTEM(Corgi Books, 2016)著者マーク・トンプソン(Mark Thompson)1973年英国ノーフォーク生まれ。これまで多くのテレビ・ラジオの天文解説番組で活躍し、BBCの人気テレビ番組「スターゲイジング・ライブ」の案内役としてよく知られる。王立天文学会のフェローで、ノーウィッチ天文協会の代表を務める。著書には、本書の他に、A Down to Earth Guide to the Cosmos、Philips Stargazing with Mark Thompson、Philips Astrophotography with Mark Thompson などがある。 訳者山田陽志郎(Yoshiro Yamada)東京学芸大学修士課程終了(天文学/理科教育)。東京と横浜の科学館で、長年天文を担当。国立天文台天文情報センター勤務を経て、相模原市立博物館の天文担当学芸員を務めた。人工衛星追跡PCソフト Orbitron の翻訳者。最近では、小学校高学年向け『宇宙開発』(大日本図書)を執筆。訳書にはヨーマンズ『地球接近天体』、バトゥーシャク『ブラックホール』(いずれも地人書館)がある。小惑星9898番 Yoshiro は、発見者と推薦者の厚意により提案され、IAU(国際天文学連合)により命名。 永山淳子(Atsuko Nagayama) 1961年東京生まれ。図書館情報大学(現筑波大学図書館情報専門学群)卒業。オンライン検索サービス会社勤務の後、主として自然科学書の包括的な校正作業などに携わっている。訳書には『望遠鏡400年物語』、『膨張宇宙の発見』、『パラサイト』、『カッコウの托卵』(いずれも共訳、地人書館)がある。 目次■はじめに 宇宙飛行士とアポロ計画/ロケットのアイデア/太陽系探査計画 ■第1章 飛行計画 宇宙旅行の難しさ/重力の法則/フライバイ/太陽系巡回飛行計画/ロケットエンジン/無重力への対策/宇宙飛行士の孤独感/ ■第2章 さよなら地球――地球、月 宇宙船の打ち上げ/宇宙服/地球の光景/流星体との衝突/人工重力/月への飛行/月の表面/月の自転/潮汐/月の重力/惑星地質学/月のクレーター/月のレゴリス/月からの脱出速度 ■第3章 炉の中へ――太陽 太陽の放射/太陽からの赤外線/太陽のスペクトル/第三世代の恒星/太陽の中心核/光球と粒状斑/太陽黒点と磁力線/太陽活動周期/彩層のスペクトル/プロミネンス/コロナの種類/コロナ・ループ/磁力線再結合/フレア/太陽圏界面/太陽の進化/赤色巨星/惑星状星雲/銀河系と渦巻腕/オリオンの腕/放射線と宇宙線/ ■第4章 人に優しくない惑星――水星、金星 内惑星/地球型惑星/岩石惑星/スタートラッカー/惑星の定義/水星の自転/金星の外見/スパッタリング/自転軸の傾き/水星のクレーター/隕石の衝突/ルペス/リンクルリッジ/水星の重力/水星の内部構造/メッセンジャー探査機/水星でのフライバイ/金星のアシェン光/マゼラン探査機/金星の大気/温室効果/硫酸の雨/ヴェネラ探査機/金星のクレーター/金星の地殻/金星の中心核/ ■第5章 おなじみの世界――火星、小惑星 カップルの宇宙飛行士/トゥー・スーツ/微少重力で育ったラット/火星の軌道/火星の衝/火星の運河/火星起源の隕石/ヴァイキング計画/火星の赤い色/火星の極冠/火星の衛星/フォボスとダイモス/火星の大気/巨大衝突クレーター/火星への入植計画/火星の自転軸/火星の季節/オリンポス山/火星の地殻/火星のマントル/小惑星の発見/ボーデの法則/軌道共鳴/小惑星帯/小惑星探査/ホーマン遷移軌道/炭素質小惑星/パラスの自転軸 ■第6章 惑星のゴリアテ――木星 巨大ガス惑星/木星の衛星の食と光速度/シューメーカー‐レヴィー第九彗星/ガリレオ衛星/イオの火山/エウロパの地殻と海/木星の潮汐力/木星の衛星の軌道共鳴/内部潮汐加熱/木星の環/羊飼い衛星/ポインティング・ロバートソン効果/原始惑星系円盤/木星の縞と帯/木星の大赤斑/ウィンドシア/木星のオーロラ/超臨界流体/クマムシ/木星の磁場 ■第7章 太陽系の宝石――土星 宇宙船内の食事と料理/国際宇宙ステーション/水のリサイクル/土星の自転速度/土星の環/環の羊飼い衛星/トロヤ群衛星/ラグランジュ点/ヒペリオンのクレーター/土星の潮汐力/イアペタスの表面とクレーター/カッシーニ探査機/タイタンの大気/ホイヘンス探査機/タイタンの有機化合物/土星の環の厚さ/メイン・リング/カッシーニの間隙/エンケの間隙/プロペラ型の擾乱/環のスポーク/土星の磁場とオーロラ/大白斑/土星の北極の六角形模様/ケルヴィン‐ヘルムホルツ機構 ■第8章 氷の辺境――天王星、海王星 超臨界流体/天王星と海王星の発見/天王星の自転軸/天王星の季節/天王星の環とそのアルベド/天王星の衛星/内部潮汐加熱/二重拡散対流/天王星の内部構造/ダイヤモンドの雨/天王星の極冠/海王星の形成/ニース・モデル/海王星の大暗斑/海王星のメタンの雲/海王星のマントル/海王星の環/海王星の衛星/トリトンの大気/海王星のトロヤ群衛星/ ■第9章 深淵の宇宙へ――冥王星 冥王星の発見/冥王星の衛星/カイパーベルト天体/内部オールト雲/冥王星の起源と進化/冥王星の大気/カーパーベルとカイパークリフ/冷たい集団と熱い集団/太陽圏/太陽磁場の反転/末端衝撃波/太陽風/ヘリオシースとヘリオポーズ/オールト雲/長周期彗星/彗星のスペクトル/原始惑星系円盤/グリーゼ581/ |