そうだったのか! 驚きの名水のチカラ

名水博士が語る水と健康、食、酒……
表紙
佐々木 健 著

ISBN978-4-8052-0913-4

四六判/192頁

\1,800+税


概要

名水というと、歴史上の著名人物が使った由緒ある湧水や様々な効き目が宣伝される機能水などが連想されるが、実は「名水」の定義はない。バイオ環境化学の研究者という本業の傍ら、40年以上にわたり日本各地の名水をたずね歩き、舌でなめ、水質分析を行い、「名水鑑定」をライフワークとしてきた著者は、どんな水を「名水」と結論づけたのか。これまであまり知られていない名水の機能と活用事例について楽しく語りながら、世界屈指の水質を誇る日本の名水が様々な危機にさらされていることに警鐘を鳴らす。

著者

佐々木 健(ささき・けん)
1949年、呉市生まれ。1972年、広島大学工学部醗酵工学科卒業。灘(西宮)の辰馬本家酒造で3年間、酒造りの修行をした後、広島大学大学院工学研究科修士、博士後期課程で学び、1980年工学博士。同年より広島電機大学(現広島国際学院大学)講師、助教授、教授、工学部長を経て、2014年学長。2015年、病気療養のため辞職。専門は生物工学、環境化学。技術士(生物工学部門、総合技術監理部門)、環境計量士(濃度関係)資格を有し、光合成細菌を用いた5-アミノレブリン酸(ALA)等の実用生産技術や放射性物質のバイオ実用除染技術の発明などで知られる。一方で、名水、迷水、名酔、迷酔、泥酔を求め全国を歩き回り、名水やお酒の化学分析やきき水、きき酒を行い、名水とは何か、食品や酒やわが国の伝統文化と水の関係を研究。「名水博士」「迷酔博士」ついには「泥酔博士」と、地元広島では呼ばれるようになる。日本生物工学会技術賞(1999年)、日本農芸化学会論文賞(2013年)、日本水大賞審査部会特別賞(2009年)、広島市民賞(2009年)などを受賞。
主な著書に、『名水紀行―山頭火と旅するおいしい水物語』(春陽堂、1992年)、『改訂増補 廃棄物のバイオコンバージョン―ゼロエミッションをめざして』(共著、地人書館、2001年)、『光合成細菌 採る・増やす・とことん使う―農業、医療、健康から除染まで』(共著、農文協、2015年)などがある。

目次

はじめに
 軟水、中硬水、硬水
 
1章 名水とは
    名水とは
    名水研究を始める
    歴史的名水、環境庁名水百選、平成の名水百選
    厚生労働省の言う名水(おいしい水)とは
    コンピュータによる名水の判定法の開発
    のりPセット
    本当の名水(おいしい水)の科学的解析
    ミネラルウオーターの名水
    水の味で最も大切なこと!
    雨の日三日後名水
    名水とは―結論
  コラム 爆笑問題、大田光さんのすばらしい“きき水”

2章 健康と名水
    カルシウムやミネラルが健康の源
    水のカルシウム、マグネシウム健康法
    水の健康インデックス
    水のミネラル成分の健康への影響
    機能水とは
    水分子のクラスター説は怪しい
    磁化水も健康的には怪しいが、おいしい水には改善できる
    アルカリイオン水は健康に良い
    スポーツと名水(1)熱中症と名水
    スポーツと名水(2)水泳と硬水、軟水
    病気に良いと言われる名水
    ラドン水は健康に良い
    広島のラドン温泉は、三朝温泉と水質は極めて近似
    実は軟水名水が、わが国では健康名水
    軟水は健康に良い
    肉食系、西洋料理好みの人は水からカルシウム、マグネシウムを
    軟水名水は美肌美人を育む
  コラム 容器にヨウ、キをつけて!

3章 食品と名水
    和風料理のだしには硬度の低い軟水が良い
    そば名人、高橋邦弘氏は軟水名水を求めて広島へ
    水の硬度と調理の関係
    アンデルセン(タカキベーカリー)は軟水パンで大成長
    お茶には軟水。軟水のみを使う、上田宋箇流茶道
    もみじ饅頭は軟水がお好き
    広島風お好み焼きは軟水がお好き
    広島風お好み焼きにマヨネーズはイケナイ!
    ワサビと軟水名水
    北大路魯山人は中硬水がお好き
  コラム 電磁鍋異聞「この鍋はだめだ! 味がのらん!」

4章 日本酒と名水
    硬水が必須だった日本酒醸造
    ミネラルが微生物や酵母を元気にする
    軟水醸造法、世記の大発明
    吟醸酒は軟水、燗酒は硬水
    日本一手に入りにくい吟醸酒をつくる新軟水醸造法
  コラム 押切もえさんと共演

5章 日本伝統文化と名水
    錦鯉と名水
    野池は軟水、展示池は中硬水、わが国初の知見
    錦鯉の安全健全な飼育と、価値を上げる色揚げ
    書道は軟水で美しく
    墨はタンパク質
    和紙も軟水
    軟水の名水こそが良い和紙を育む

6章 海軍と名水
    赤道を越えても腐らない水
    旧海軍の将校さんは“きき水”名人
    戦艦大和は腐りにくい軟水の名水を積んでいた
    この世界の片隅に……名水アリ
    SL機関区の水は軟水名水
    帝国海軍水蓄式大油槽
    なんと底なし巨大タンク、名水が底
  コラム 大山のぶ代さんとのテレビ共演

7章 軟水人間論
    カープは軟水で強くなる
    軟水人間はゆっくり、じっくり、諦めず
    カープを出ると三〜五年程度の活躍
    二〇一六年、カープ二五年ぶりのセ・リーグ優勝
    サンフレッチェ広島は軟水人間
    マツダは軟水企業、軟水人間が力を発揮する企業
    青崎では軟水が豊富、山口防府も豊富
    ロータリーエンジンの実用化は軟水人間でこそ
    スカイアクティブエンジンも、ロータリーのスピリットで
    歴史上の主な軟水人間たち
    軟水名水を求め全国を放浪した、きき水名人、種田山頭火
    硬水で水の俳句を詠んでいる? 佐々木仮説の危機
    水音で軟水水質がわかる
    平清盛は軟水系もののふ(武士)
  コラム スポーツの軟水人間たち

8章 軟水ワールド、日本
    日本の軟水水質は世界屈指
    豊かな軟水は豊かな森林の恵み
    小規模の森林でも保水力は抜群
    鎮守の森は、水を守る森
    ぬくもりのある軟水名水
    西条山と水の環境機構
    酒造組合自身が市民と行政と一体となって名水を守る
    山を楽しみ、水を楽しむ
    里山も水源として非常に重要
    高齢化、労働力不足で里山の整備が進まず
    水の危機、日本
    さらなる危機。中国、外国資本が、森林と水を買いつつある
    目的は水
    林業を守ることが水源の保護
    ヒロシマの名水・原爆献水
    名水についてのまとめと今後の課題

おわりに

附録1 高度な名水鑑定(技術士鑑定)の実際(水質鑑定報告書の例)
附録2 厚生労働省水質飲用基準の読み方・解説