スペースデブリ宇宙活動の持続的発展をめざして
概要近年、各国の宇宙機関、民間企業、大学などによる宇宙開発がますます活発化する中、その活動を脅かす宇宙のゴミ問題―スペースデブリの問題が注目を集めています。寿命を終えた衛星、打上げの際に出るロケットの残骸や放出部品、衝突や爆発などによる破片、こうした軌道上のゴミが稼働中の衛星に衝突する事故が実際に起きており、各国がその対策に乗り出しています。このスペースデブリの問題は、いかにデブリを発見するか、いかに被害を未然に防ぐか、いかにデブリを減らすかという工学的な問題のみならず、規制やガイドラインの策定、国際関係、安全保障の問題など、その関係する領域は極めて多岐に及びます。本書は、その概念や現状分析、対策に留まらず、法的問題や安全保障まで、スペースデブリについての諸問題を概観する初めての包括的な解説書です。 著者加藤 明(かとう あきら)昭和27年生まれ.九州大学大学院工学府航空宇宙工学専攻修了、九州大学工学博士、技術士(航空・宇宙部門)、日本技術士会会員。昭和50年宇宙開発事業団(当時)に入社後、ロケットエンジンの開発、研究開発企画調整、衛星環境試験、安全・信頼性管理業務等に従事、並行して平成5年以降JAXAデブリ発生防止標準の制定、世界宇宙機関間スペースデブリ調整委員会(IADC)のデブリ低減ガイドラインの起草、国連の各種デブリ規制文書の作成委員会に参加、国際標準化機構の技術委員として関係規格の起草・審議を担当。2013年3月定年退社後もJAXA非常勤職員としてデブリ関係業務を継続。 目次まえがき 第1章 スペースデブリ問題の背景 1.1 デブリの発生 1.2 デブリの分布状況 1.3 デブリの発生原因 1.4 世界のデブリ規制の状況 第2章 デブリの分布 2.1 地上から観測できる物体の発生数 2.1.1 概観 2.1.2 低軌道域 2.1.3 静止軌道域 2.1.4 我が国の衛星の打上げ状況 2.2 デブリ分布モデル 2.3 将来予測 2.4 我が国の状況 第3章 デブリの観測 3.1 個別物体識別のための地上観測及び軌道上観測 3.1.1 観測技術 3.1.2 主要国の状況:米国 3.1.3 主要国の状況:欧州 3.1.4 主要国の状況:ロシア 3.1.5 主要国の状況:中国 3.1.6 主要国の状況:カナダ 3.1.7 我が国の状況 3.2 微小粒子の軌道上捕獲・検知手法 第4章 デブリの発生源 4.1 概要 4.2 デブリ発生事例 4.2.1 中国衛星破壊実験 4.2.2 Iridium 33とCosmos 2251の軌道上衝突事故 4.3 破片の発生状況 4.4 意図的な破壊 4.5 運用終了後の破砕 4.6 不具合による破砕 4.7 将来の予測 第5章 衝突被害 5.1 衝突被害の概要 5.2 衝突の被害 5.3 衝突頻度 5.4 衝突被害回避策 5.4.1 地上から観測可能な物体との衝突の回避 5.4.2 微小デブリ 第6章 デブリ対策設計・運用活動 6.1 概要 6.2 放出物の抑制 6.3 爆発防止 6.3.1 意図的破壊活動の防止 6.3.2 運用終了後の破砕防止 6.3.3 不具合による破砕防止 6.4 運用終了後の保護軌道からの退避 6.4.1 静止軌道について 6.4.2 低軌道衛星について 6.5 再突入による地上被害の防止 6.5.1 再突入から地上落下までの現象 6.5.2 世界の状況 6.5.3 落下危険度はどのように表せるか 6.5.4 どの程度溶けるのか 6.5.5 落下の予報と被害の低減の可能性 6.6 大きなデブリとの衝突の回避 6.6.1 リスク管理 6.6.2 大型物体との衝突回避 6.6.3 ロケット打上げ時の衝突回避 6.7 微小デブリに対する衝突防御 6.7.1 リスク管理 6.7.2 衝突防御措置の基本方針 6.7.3 衝突頻度の見積もり 6.7.4 防御対象の識別と損傷被害の見積もり 6.7.5 リスク許容限界と非故障確率 6.7.6 防御処置 6.7.7 衝突検知と応急処置 6.8 超小型衛星の問題 6.8.1 背景 6.8.2 世界の動向 6.8.3 小型衛星問題 6.8.4 近い将来の小型衛星の動向 第7章 デブリの除去による軌道環境の改善 7.1 除去の必要性 7.2 実現に向けての課題 7.3 除去に関する研究について 7.3.1 除去対象の選別 7.3.2 除去対象の検知、接近、捕獲方法 7.3.3 減速技術 第8章 世界の規制面での取り組み 8.1 経緯 8.2 各国の動向 8.2.1 米国の動向 8.2.2 フランスの動向 8.2.3 欧州宇宙機関(ESA)の動向 8.2.4 英国 8.2.5 ドイツ 8.2.6 ロシア 8.2.7 ウクライナ 8.2.7 中国 第9章 安全・平和を希求する国際的フレームワーク構築への努力 9.1 歴史的経緯 9.2 宇宙活動の長期持続性の検討 9.3 宇宙活動に関する国際行動規範 9.4 透明性と信頼性の醸成手段の構築 9.5 国際的取組の纏め 9.6 日本の取り組み 9.6.1 宇宙基本法 9.6.2 宇宙基本計画 9.6.3 我が国に求められる監視能力 あとがき さくいん |