唐沢流 自然観察の愉しみ方

自然を見る目が一変する
表紙
唐沢孝一 著

ISBN978-4-8052-0878-6

四六判/200頁

¥1,800+税

正誤表

概要

自然観察といっても何をどのように観察するかは個人の好みで、特別な方法があるわけでもない。各自それぞれの流儀で自然に接することになる。本書は唐沢流の自然との向き合い方、じっくり観察する愉しみを紹介する。常識という自然観察の壁を乗り越えるのは容易ではないが、その壁をひっくり返すと新しい世界が見えてくる。予測を持って観察しない限り自然は何も見せてくれないが、予測し思い込むことが観察の目を曇らせてしまう。雑誌『BIRDER』(文一総合出版)に連載された「唐沢流・自然観察の愉しみ方」の中から25篇を精選。選ぶに当たっては、観察に興味をもてそうな内容、あるいは自然を見る視点として役立ちそうな内容を選ぶことにし、これから自然観察を始めたいという方、自然を観察するための新しい視点に興味を持っている方、あるいは、フォークロアや宗教・文明・文化・芸術と自然との関係に興味を持っている方など、多様な読者を想定した。

著者

唐沢孝一(からさわ・こういち)
1943年群馬県生まれ。東京教育大学理学部卒業。都立高校などの生物教師をへて2008年まで埼玉大学教育学部で「自然観察入門」を担当した。現在は執筆、講演、自然観察会の講師などに携わっている。NPO法人自然観察大学学長、都市鳥研究会顧問、市川市文化財保護審議会委員。モズの生態研究で日本鳥学会奨学賞、市川市市民文化賞(スウェーデン賞)を受賞。著書に『マンウォッチングする都会の鳥たち』(草思社)、『カラスはどれほど賢いか』(中公新書)、『野鳥博士入門』(全農教) 等がある。

目次

目次
T 新鮮な視点で自然を見る――観察の切り口を見つける
01 海に出たオオバン――冬の東京湾
 思い込みの知識
 百聞は一見にしかず
 ふなばし三番瀬海浜公園
 海に定着したか、三番瀬のオオバン
02 ヤマガラが教えてくれた虫こぶ入門
 早春のクヌギの小枝で
 虫こぶの正体を調べる
 ヒョンノキの虫こぶ
 エゴノキとアシボソ(イネ科植物)
03 白樺峠、「びーびー君」の思い出
 初めての白樺峠
 人に語りかけるびーびー君
 鳥と人とが向きあう姿勢
04 満開の桜花に浮かれる、人も鳥も
 桜の花と日本人
 本命はヒヨドリとメジロ
 スズメの新しい戦術
 コゲラ、ドバト、そしてヒドリガモ
05 時間をかけて観察を楽しむ
 春まで待ってみようか……
 アルビー君とその家族
 市街地と江戸川のスズメ
06 原風景を振りかえる……
 東京オリンピックを知らない世代
 水田の開墾とハンノキ林
 梅田氏の語る鎌ケ谷の原風景

U 鳥の視点で自然を見る――鳥たちの非凡な生態を楽しむ
07 ツバメの子育て、最新情報
 秋葉原駅でも繁殖していたツバメ
 様変わりした旧街道と商店街
 生き残るツバメたち
08 八方尾根のツバメと高山植物
 八方尾根と蛇紋岩
 高山蝶が吸蜜し、アキアカネが群れる
 日本最高地のツバメの巣?
09 白山山麓の限界集落を巡る
 たった一羽のスズメを求めて
 スズメのいない「阿手」集落
 サンパチ豪雪の記憶
10 釣り人ウォッチングするサギ
 はじめに
 目先の赤いコサギの観察
 釣り人をウォッチングするサギ
11 コサギが捕らえたカエルの正体
 ムラサキツバメの集団越冬
 人慣れしたコサギ
 コサギとウシガエルの格闘
 写真でわかった新事実
12 足環ウォッチングのすすめ
 個体識別したスズメとカラス
 足環ウォッチング
 オナガガモやウミネコの足環

V 磯や漁港で海を楽しむ――魚と鳥の関係を紐解く
13 漁港に群れるトビ、カモメ、サギの仲間
 磯の延長としての漁港
 コサギ、ダイサギ、アオサギ
 鴨川漁港のトビの大群
 問われる釣り人のモラル
14 豊漁に沸く漁港と磯の鳥
 2011〜2012年の冬鳥
 南房総のユリカモメの大群
 豊漁で活気づく漁港
 長年の観察を楽しむ
15 ウツボに追われたイワシの群れ
 お目当てのシノリガモ
 群がるトビとイワシの群れ
 ウツボから出たイワシ

W 虫の目で自然を楽しむ――虫たちの生き残り戦略
16 日本列島を北上する蝶 117
 ツマグロヒョウモンの分布拡大
 次々と北上する蝶
 ある日のトトロの森
17 鳥にとっても目新しい昆虫たち
 ラミーカミキリのラミーってなに?
 ヨコヅナサシガメとエサキモンキツノカメムシ
 外来昆虫と野鳥の捕食
18 足元の昆虫、葉の上のササグモ
 コハンミョウに注目
 ササグモを探す
 エゴノキを丸ごと観察
19 ミツバチと養蜂を楽しむ人々
 「自由が丘」に飛び交うミツバチ
 半野生のニホンミツバチ
 ランの花に誘われるニホンミツバチ
 都心でも増えたニホンミツバチ
20 集団越冬するオオキンカメムシ
 オオキンカメムシとの出会い
 アルプスを越えての「渡り」
 興味深いさまざまな生態
 房総半島で越冬する蝶
21 隠れんぼするホソミオツネントンボ
 心ときめく晩秋〜初冬
 越冬するトンボの不思議?
 胸の斑紋による個体識別の試み
 エゴノキの冬枝に九六日間滞在
 雪の日のホソミオツネントンボ
22 ムカシトンボの生き残り戦略
 生きる化石「ムカシトンボ」
 栃木県の山中を訪ねる
 シオヤトンボ、ホソミオツネントンボ

X クモを見る楽しみ――奥深い自然遊び
23 ジョロウグモの交接と越年
 ノミの夫婦
 クモの交接
 越年したジョロウグモ
24 クモから見たバードウォッチング
 クモ糸の魅力
 身を隠すためのさまざまな工夫
 鳥やコウモリを捕食するクモ
25 クモ合戦に見る「自然遊びの意義」
 フンチを熱く語る川名興先生
 富津八坂神社のクモ合戦
 クモの生態とクモ合戦
 自然を取り戻す「自然遊び」