鮭鱸鱈鮪
食べる魚の未来最後に残った天然食料資源と養殖漁業への提言
概要著者ポール・グリーンバーグは、コネティカット州に住む釣り少年だった。長じてジャーナリストになり、ユーゴ紛争などを取材した後、再び釣りの世界に戻ってきたが、釣りおよび漁業環境のあまりの変化に違和感を感じたという。漁業資源枯渇の時代に到り、資源保護と養殖の現状を知るべく、著者は世界を駆けまわり、そこで巨大産業の破壊的漁獲と戦う人や、さまざまな工夫と努力を重ねた養殖家たちにインタビューを試みた。本書でおもに扱っている四種の魚、河川のサケ、近海のシーバス(スズキ目)、大陸棚外縁斜面のタラ、遠洋のマグロは、歴史上この順で、ヨーロッパ人が漁業の対象にしていったものだ。それはまた、幼少時に始まる著者の釣行の発展の順にも一致している。本書は、このように今日的問題に対して精力的かつ真摯に取り組んだ一冊で、単に啓蒙的解説を試みるだけにとどまらず、アラスカの先住民に対する眼差しのやさしさや、イタリアでシーバスの稚魚を買い付けた帰りに地中海で嵐に遭って稚魚の大部分を死なせてしまうギリシャ人の話、あるいは、仔魚の餌の発見やウキブクロ形成の謎など、興味深いエピソードが随所に組み込まれていて、読者を飽きさせない。原著FOUR FISH: THE FUTURE OF THE LAST WILD FOOD (The Penguin Press, 2010)著者ポール・グリーンバーグは1967年生まれ。 New York Times,National Geographic,Times,Vogue などに、主に漁業や海洋、環境問題についての記事を寄稿しているエッセイスト。ニューヨーク市在住。本書(FOUR FISH)は、2010年に New York Times ブックレビューの A Notable Book of the Year を獲得するとともに、2011年にはアメリカ料理界でもっとも権威あるとされる James Beard Award (Writing and Literature 部門)を受賞している。目次序章 釣り少年の猟場/ロングアイランド湾の魚/釣りへの回帰/消えた魚/市場に並ぶ四種の魚 第1章 サケ ―― 王様のリクエスト 北米におけるサケ遡上の消滅/アラスカでのサケの保護/ノルウェーでのサケ養殖/ サケ養殖と環境問題/ユーコン川のキングサーモン/混合養殖/ サーモンリバーへのサケの回帰 第2章 シーバス ―― ハレの日の主役が働きに出る 脊椎動物中最大の目であるスズキ目/養殖にはおよそ適さないシーバスの養殖/ イスラエルにおけるシーバス養殖/ギリシャでのシーバス養殖/養殖技術の開発/ バラマンディの養殖 第3章 タラ ―― 庶民の再訪 カーランスキーのベストセラー『タラ』/乗り合い釣り船によるタラ漁/ 食糧資源としてのタラ/大西洋でのタラの破綻/持続可能な漁業とは/タラ資源の回復/ タラの養殖/ホキの養殖/ベトナムでのパンガシウス養殖/ティラピアの養殖 第4章 マグロ ―― 最後の一切れ マグロ釣りの乗合船/領海を横断するマグロ/寿司ブームとクロマグロ/マグロ漁の規制/ クジラは魚か/捕鯨の衰退と終焉/クロマグロのカルパッチョ/マグロの保護・養殖/ マグロと水銀/日本でのマグロ食/カハラ(コナ・カンパチ)の養殖 まとめ シーフード/漁業活動の削減/禁漁区/管理不能な魚種/食物連鎖の底辺/養殖漁業の条件 エピローグ 釣り好きの娘/父娘で釣り船へ/ロングアイランド海峡での釣果 訳者夏野徹也1944年富山県生まれ。金沢大学理学部卒業。金沢大学、群馬大学、オレゴン州立大学、日本歯科大学などで、動物発生学、細胞生物学、微生物学などの研究に従事。医学博士、理学修士。2009年に定年退職した後は、地元の新潟で海釣りを楽しむ。 |