ミジンコ先生の諏訪湖学

水質汚濁問題を克服した湖
表紙
花里孝幸 著

ISBN978-4-8052-0848-9

四六判/224頁

\2,000+税


概要

国内の多くの湖の水質浄化が進まない中、諏訪湖の水質は近年顕著に改善した。そして水質改善に伴い、諏訪湖の生態系も大きく変化している。さらに生態系の変化は人々の暮らしに影響を与え、漁業不振など新たな問題も生んだ。諏訪湖で起きた様々な現象は、今後国内各地の湖でも起こりうる。諏訪湖から、湖と人とのよりよい付き合い方が見えてくる。

目次

第1章 諏訪湖はどうして汚れたか
 1-1 浅い湖は汚れやすい
 1-2 諏訪湖は昔深かった
 1-3 原因物質は広範囲から
 1-4 湖の水質汚濁ってなに?
 1-5 アオコの正体
 1-6 アオコがつくる湖内環境@―酸素
 1-7 アオコがつくる湖内環境A―pH
 1-8 湖水に及ぼす風のはたらき
 1-9 水草が湖内環境を変える
 1-10 水草が減り、汚濁が進んだ

第2章 諏訪湖の生き物事情
 2-1 迷惑害虫ユスリカの正体
 2-2 諏訪湖のミジンコ
 2-3 季節で変わる複雑なミジンコ社会
 2-4 ノロはワカサギの好物
 2-5 魚を逃れ、夜は表層、昼は湖底に

第3章 水質浄化への取り組み
 3-1 河川、海域に比べ、進まない湖の浄化
 3-2 形態を変え、湖内循環する窒素とリン
 3-3 下水道が浄化に貢献
 3-4 高濃度の窒素・リンが処理排水に溶け出す
 3-5 放出された処理排水が天竜川浄化にプラス
 3-6 諏訪湖の水質の変化

第4章 水質浄化と生態系
 4-1 アオコが突然少なくなった
 4-2 夏の諏訪湖、毒素が減少
 4-3 消えた「ユスリカ大発生」
 4-4 ワカサギの成長が悪化
 4-5 「アオコで魚が酸欠」は誤解
 4-6 六〇年前は「水がきれい」は誤認
 4-7 富栄養湖の食物連鎖ではエネルギーが停滞
 4-8 諏訪湖の水質が天竜川のざざ虫の生態に影響
 4-9 湖面を覆うヒシ群落
 4-10 クロモ群落の復活が新たな問題に
 4-11 白樺湖のアオコ、生態系操作で減少
 4-12 大型ミジンコ増加の謎
 4-13 関わり合う生物群集と、その変化

第5章 湖と人のこれから
 5-1 水質浄化が“自然に”進む
 5-2 地球温暖化が生物に影響
 5-3 温暖化でミジンコ小型化
 5-4 結氷しないと湖底の水温は低くなる
 5-5 憩いの場創出が環境保全を促進
 5-6 漁業や観光、互いの理解が必要
 5-7 暮らしを生態系に合わせる
 5-8 水質浄化対策にシジミを活用
 5-9 諏訪湖は水質浄化のトップランナー

 あとがき
 引用文献
 索引
 著者紹介