日食計算の基礎
Calculation of Solar Eclipse Phenomena

日食図はどのようにして描くか
表紙
長沢 工 著

ISBN978-4-8052-0839-7

A5判/288頁

\3,800+税

正誤表 ※PDFファイル

概要

 本書は、日食に関係する種々の計算法を解説している。たとえば、日食はいつ起こるのか、ある特定の日食はどこで見られるか。それは何時に始まり、何時に終わるか。太陽はどのくらい欠けるのかといった内容の計算である。それらの中で、特に、日食の見られる範囲を地図に示す「日食図」の描き方に重点を置いた。現在、だれでもパソコンを計算に利用できるので、昔の手計算の時代に比べると、はるかに大量の計算をやすやすと実行できるようになった。したがって、その筋道さえ理解すれば、日食の予報計算はそれほど困難なものではない。
 日食計算では、その過程に、ニュートン法、はさみうち法、繰り返し代入法などによる方程式の数値解法や、最小二乗法による平滑化、コンピュータ作画など、応用数学のさまざまな技法が適用される。だから、その過程で変化に富んだ数値計算の醍醐味を味わうこともできる。日食計算は、天文計算の極致を体験するものだといってもよい。

目次

本書を読むにあたって

第1章 日食について
 1.1 日食とは
 1.2 私が見たいくつかの日食
 1.3 日食の計算:全般的な話
  ☆☆太陽を食うもの

第2章 日食の起こる日時と条件
 2.1 日食が起こる状況
 2.2 サロス周期による予測
 2.3 基本的な考え方
 2.4 部分日食の起こる条件
 2.5 皆既日食の起こる条件
 2.6 金環日食の起こる条件
 2.7 太陽、地球、月の半径
 2.8 月と太陽間の最小角距離
 2.9 計算実例
 2.10 判定の目安
 2.11 2章のまとめ

第3章 日食図とその計算の準備
 3.1 日食図の説明
  3.1.1 タイプTの日食図
  3.1.2 タイプUの日食図
  3.1.3 極付近の日食図
 3.2 日食図を計算するための予備知識
  3.2.1 直交座標軸の回転
  3.2.2 日食計算に使用する座標系
  3.2.3 座標系の変換関係
  3.2.4 地球に固定した点の基準座標系における移動速度
  3.2.5 各種定数
 3.3 準備計算
  3.3.1 日食計算を始めるデータ
  3.3.2 月の位置の補正
  3.3.3 ベッセル要素
  3.3.4 ベッセル要素の計算例
  3.3.5 ベッセル要素の平滑化
  ☆☆日食は1年に何回起こるか

第4章 日食の判定と基本時刻、基本点
 4.1 日食が起こるかどうかの判定
  4.1.1 地球外周楕円
  4.1.2 逐次近似法(1)、ニュートン法
  4.1.3 月影軸が地球中心に最接近する時刻と日食のタイプ
  4.1.4 逐次近似法(2)、繰り返し代入法
  4.1.5 4 点を通る3次式から極小値を求める
  4.1.6 日食が起こるかどうかの判定
 4.2 基本時刻
  4.2.1 基本時刻の定義
  4.2.2 月影軸に関する基本時刻、基本点
  4.2.3 月の半影に関する基本時刻、基本点
  4.2.4 南北限界線に関する基本時刻、基本点
  4.2.5 日の出、日の入りに関する基本時刻、基本点
  4.2.6 地球外周楕円に曲線が交わる条件
 4.3 基本時刻、基本点の計算
  4.3.1 月影軸に関する基本時刻、基本点の計算
  4.3.2 月の半影に対する基本時刻、基本点の計算
  4.3.3 南北限界線に関する基本時刻、基本点の計算
  4.3.4 日の出、日の入りの境界に対する基本時刻の計算

第5章 日食図の線の描画
 5.1 基準座標から経緯度への換算
 5.2 中心線
 5.3 日の出、日の入りに欠け始める線、食が終わる線
 5.4 日の出、日の入りに食が最大になる線
  5.4.1 食分の定義
  5.4.2 日の出、日の入りに食が最大になる線
  5.4.3 最大食線
  5.4.4 日の出、日の入りに食が最大になる線上の点の計算
  5.4.5 q1; q4 の存在
  5.4.6 q1; q4 の計算
 5.5 南北限界線
  5.5.1 半影の南北限界線、その条件と補助ベッセル要素
  5.5.2 南北限界線上の点の位置計算
  5.5.3 本影の南北限界線
  5.5.4 本影南北限界線の端点
 5.6 食分に関係する線
  5.6.1 等食分線
  5.6.2 等食分線の端点
  5.6.3 最大食同時線
 5.7 本影の輪郭線

第6章 特定の観測点で見る日食
 6.1 日食の欠け始め、食の終わりの時刻
 6.2 食分が最大になる時刻と最大食分
 6.3 皆既あるいは金環の開始、終了時刻
 6.4 太陽の欠けぐあい
 6.5 太陽と月の視半径の比
 6.6 太陽の見える向き

付録
 A 章動の計算
 B 日食図の線の位置
 C ΔT の推定
 D 計算試用データ

参考文献
あとがき
索引