残しておきたいふるさとの野草
概要田んぼ一面に咲き誇るレンゲ。昔は春になればあちらこちらで見られるありふれた風景だったが、今ではめっきり見かけなくなってしまった。ふるさとの風景を彩ってきた植物が危機に瀕している。驚くべきことに今、絶滅が心配される日本の植物のおよそ半数が、ふるさとの風景をすみかとする植物だ。かつての日本では、植物と人間とは、バランスを保ちながら共存してきた。しかし、人間は必要以上に自然に介入し、植物のすみかを奪い、自然に働きかけをする暮らしを失ってしまった。その結果、里の環境に依存していた多くの植物たちの生存の場が奪われている。本書では、遠い万葉や紫式部の時代から人々とともにある、これからもぜひ残しておきたいなつかしい野草の姿を紹介する。著者稲垣栄洋(いながき・ひでひろ)1968年、静岡県生まれ。岡山大学大学院農学研究科修了。農学博士。農林水産省退職後、Uターン。現在、静岡県農林技術研究所に勤務。植物学や民俗学の知識をもとに描き出す軽妙な語り口のエッセイにファンは多い。著書に『農と出会う自然体験』(地人書館)、『雑草の成功戦略』(NTT出版)、『身近な雑草のゆかいな生き方』『蝶々はなぜ菜の葉にとまるのか』(以上、草思社)、『キャベツにだって花が咲く』(光文社)などがある。 三上 修(みかみ・おさむ) 1954年、横浜市生まれ。多摩美術大学グラフィック科卒業。現在、イラストレーターとしてフリーで活躍。本書に描かれたような野草だけではなく、野菜、草木などの植物をはじめ、魚類、動物、医学関係まで、幅広く自然科学のイラストを得意としている。 目次田んぼの野草 セリ――毒と薬は紙一重 コオニタビラコ――比べられて鬼になる タネツケバナ――農作業の始まり スズメノテッポウ――田んぼの雀の大戦争 レンゲ――持ちつ持たれつ共に生きる コナギ――ロマンチックも今は昔 イボクサ――侵入者は誰だ オモダカ――威張った葉っぱ コブナグサ――イエローマジック 畦道の野草 ハハコグサ――母と子の節句 チチコグサ――母と子にはかなわない ナズナ――春の来ない冬はない ノビル――寺に入るべからず ヨモギ――乾いた風がよく似合う カラスノエンドウ――カラスとスズメの知恵比べ ジシバリ――お花畑で泣かされて スイバ――男と女のラブゲーム タンポポ――悪者は誰だ ゲンノショウコ――源平の代理戦争 チドメグサ――地べたのパートナー キランソウ――地獄からよみがえる トキワハゼ――花の奥の秘め事 チガヤ――太らせた君が好き ミソハギ――先祖を迎える畦の花 水辺の野草 カサスゲ――科学技術もかなわない ヒシ――だから忍者は持ち歩く イグサ――日本人の心に火を灯す ヤナギタデ――蓼食う虫も好き好き ジュズダマ――美しき涙の理由 雑木林の野草 フキ――かわいい春の使者 フクジュソウ――まだ来ぬ春を先取り カタクリ――はかない命の真相 ササユリ――さゆりは夕暮れに美しい アツモリソウ――平家物語の結末 ガガイモ――伝説の不思議な果実 カラスウリ――伸びたつるの先にあるもの ハシリドコロ――鬼が見える草 トリカブト――ブスを生む美しい花 野原の野草 オニユリ――鬼と呼ばれた花の工夫 ノアザミ――国を救った英雄 イラクサ――イライラしないで タケニグサ――運動会のおまじない イタドリ――世界を舞台に大暴れ キキョウ――失われる季節感 カワラナデシコ――大和なでしこは今どこに ワレモコウ――寂しい秋の風景 ヨメナ――嫁のように美しい ススキ――イネより高級 ナンバンギセル――熱烈な片思い ヤエムグラ――自力で立たずに大成功 |