クマムシを飼うには

博物学から始めるクマムシ研究
表紙
鈴木忠 Interviewee  森山和道 Interviewer

ISBN978-4-8052-0803-8

四六判/208頁

\1,400+税



概要

本書は、サイエンスライター森山和道の週刊メールマガジン「サイエンス・メール」(moriyama.com)で配信された生物学者鈴木忠へのロングインタビュー「クマムシのナチュラルヒストリー」(2007年2月〜5月)をまとめた単行本。クマムシの生態から研究の現状までを多方面から語り合う。乾燥すると「樽」になり、放射線や熱、低温にも負けない。そんな「不死身伝説」で知る人ぞ知る小さな動物、クマムシ。それだけで緩歩動物門を構成する生き物だ。しかし、その「伝説」はどこまで本当なのか。そもそもクマムシとはどこに住んでいるどんな生き物なのか。何を食べてどんな暮らしをおくっているのか。どこまでが真実なのか、何がわかっていて何がわからないのか。サイエンスライター森山和道は、鈴木忠にロングインタビューを試み、自身のメールマガジン「サイエンス・メール」において、14回にわたって配信した。このインタビューでは、クマムシの生態について語られただけではなく、研究対象としてクマムシを選んだことによって見えてくる自然科学研究の現場が、一般読者に実感をこめて示されている。森山の巧みな問いによって、研究者自身の生身の姿が浮かび上がり、日本における研究現場の現状も明らかになる。著者たちは、クマムシに興味を持ったらそれだけでなく、そのへんの道ばたに生えているコケの中にも、さまざまな生物同士が絡み合うミクロな宇宙が存在することを認識してほしいと願いながら、ロングインタビューを締めくくっている。

目次

目次

Part T 観察
 クマムシって?!
 クマムシのナチュラル・ヒストリー
 所属は慶応大学医学部
 楽しいクマムシ観察
 「おお、食べた!」 ワムシを丸飲みするクマムシ
 クマムシの産卵数
 オスの問題もまだ全然わからない

Part U 生態
 生きた動物の行動を見るのは難しい
 クマムシ研究者は世界で100人未満?
 クマムシの化石
 脱皮という特徴
 海のクマムシを見たい
 クマムシに関するアンバランスな知識……知名度の高さと情報の豊かさ
 オニクマムシの卵巣

Part V 研究
 以前の仕事は「ウズラの小腸に存在する中性糖脂質の単離精製と構造決定」
 まだまだこれからのクリプトビオシス関連研究
 顕微鏡で微細形態を見る仕事は衰退している
 分類も難しいクマムシ
 いるかどうかすら、手付かず
 普通に見られる!?
 コケの中の微細な生態系の中での絡まり合い

Part W 教育
 クマムシ研究に移った本当の理由
 面白い生き物を探してきて、ずっと付き合いたかった
 野生動物としてのクマムシ
 「この商品を買った人はこんな商品も買っています」
 画廊兼酒場「がらん屋」で人生を学んだ
 「単純にそれを見て面白い」時代の人たちが羨ましかった

Part X 文献
 「オニクマムシ」のアトラスを作りたい
 クマムシの卵巣の成熟過程の多様性
 腹毛動物イタチムシも見てみたい
 『へんないきもの』の功罪
 レンジでチンはしたくない
 貴重な文献の絵を紹介できたこと
 日本は貴重な資料を保存しておく文化がない

Part Y 評価
 100年の視座を持った研究
 自由な研究を阻むな
 好奇心だけで成り立つ世界はあるか
 クマムシの研究って何の役に立つの、と聞かれたら
 クマムシをきちんと紹介した世界で唯一の本?
 『クマムシ?!』誕生に至るまで
 クマムシのゲノム研究の可能性