Rabies reemergence in Japan: Concerned scenarios

狂犬病再侵入

日本国内における感染と発症のシミュレーション
表紙
神山恒夫 著

ISBN978-4-8052-0798-7

A5判/184頁

\2,200+税



概要

2006年11月、帰国後に狂犬病を発症する患者が相次いだ。狂犬病は世界で年間約5万人が死亡し、発症後の致死率100%。そして今、この感染症が国内発生するのは時間の問題にある。本書では海外での実例を日本の現状に当てはめた10例の再発生のシミュレーションを提示し、狂犬病対策の再構築を訴え、一般市民への自覚と警告を促す。

目次

はじめに 

第1章 狂犬病と人獣共通感染症
 1.1 ヒトの感染症の60%以上は動物由来 
 1.2 日本の人獣共通感染症 
 1.3 狂犬病の歴史
 1.4 狂犬病ウイルスとリッサウイルス
 
第2章 動物の狂犬病
 2.1 イヌとネコの狂犬病―都市型野生動物と都市型狂犬病
 2.2 エキゾチックペット(フェレットや齧歯目動物など)や家畜(ウシなど)の狂犬病
 2.3 森林型狂犬病―野生の地上哺乳類(キツネ、アライグマなど)
 2.4 コウモリの狂犬病
 
第3章 ヒトの狂犬病
 3.1 狂犬病ウイルスの侵入と中枢神経への移動―潜伏期
 3.2 初期(前駆期)の症状
 3.3 脳への到達と増殖―興奮・狂騒期(急性神経症状期)と麻痺期(昏睡期)
 3.4 実験室診断
 3.5 100%の致死率

第4章 狂犬病ワクチンの開発
 4.1 ピエール・ゴルチエ、ルイ・パスツール、梅野信吉
 4.2 狂犬病ワクチンの特徴―暴露前接種と暴露後接種

第5章 日本の狂犬病
 5.1 狂犬病の日本への侵入
 5.2 明治・大正・昭和期の流行と対策
 5.3 再流行、そして撲滅
 
第6章 海外の狂犬病事情
 6.1 発生数と流行地域
 6.2 韓国と朝鮮半島
 6.3 ロシア極東地域
 6.4 中国
 6.5 台湾
 6.6 フィリピン
 6.7 タイ
 6.8 インド
 6.9 オーストラリア
 6.10 その他のアジア・太平洋地域
 6.11 ヨーロッパにおける狂犬病の歴史と現状
 6.12 フランスの経験
 6.13 イギリスの経験―PETS(ペット・トラベル・スキーム)とリッサウイルス感染
 6.14 南北アメリカにおける狂犬病の特徴とその対策

第7章 懸念される日本への再侵入とそのシミュレーション
 7.1 再侵入が懸念される理由と、シミュレーションの必要性 
 7.2 ヒト狂犬病の輸入感染のシミュレーション
  Simulation 1 海外旅行から帰国後の発病のシミュレーション(暴露後ワクチン接種受けず)
   実例:2006年、日本が経験した輸入狂犬病2例
  Simulation 2 海外赴任から帰国後の発病のシミュレーション(暴露後ワクチン接種の遅れ)
   実例:スリランカにおける暴露後接種の失敗の例
  Simulation 3 海外出張から帰国後の発病のシミュレーション(感染動物と接触した記憶なし)
   実例:アメリカ合衆国における食虫コウモリが原因となった狂犬病の例
  Simulation 4 在留外国人の発病のシミュレーション
   実例:台湾における輸入狂犬病発病の例
  Simulation 5 海外での臓器移植後の発病のシミュレーション
   実例: ドイツにおける移植が原因の狂犬病発生例
 7.3 動物の輸入狂犬病シミュレーション―輸入感染と国内発生のグレーゾーン
  Simulation 6 動物検疫所内での発病のシミュレーション
   実例:イギリスでの動物検疫所内発生報告
  Simulation 7 不法輸入動物の発病のシミュレーション
   実例:検疫所の判断ミスによる感染動物の侵入例
 7.4 ヒト狂犬病と動物狂犬病の国内発生―最も深刻な事態
  Simulation 8 ヒト狂犬病の国内発生のシミュレーション(国内野生動物からの感染)
   実例:韓国とフランスの経験に学ぶ
  Simulation 9 動物狂犬病の国内発生のシミュレーション(港湾での不法上陸動物からの感染)
   実例:フランスにおける不法持ち込みのイヌが原因となった狂犬病汚染
  Simulation 10 ヒトの原因不明の脳炎発生のシミュレーション(リッサウイルス感染)
   実例@:デンマークとオランダにおけるコウモリのリッサウイルス保有状況
   実例A:イギリスにおけるヨーロッパコウモリリッサウイルスによる狂犬病

第8章 狂犬病をリ・エマージさせない
 8.1 エマージングディジーズとリ・エマージングディジーズ
 8.2 動物の輸入禁止、検疫、衛生証明書―水際作戦の三本柱
 8.3 万一の侵入に備えて―検査と治療の体制
 8.4 イヌワクチン接種の現状
 8.5 「70%のイヌにワクチン接種を!」の根拠はどこに?
 8.6 イヌ狂犬病のリ・エマージと拡散はワクチン接種では防げるか?
 8.7 求められる真の対策―専門家への期待

おわりに―水際が破られた時、拡散の防止から再撲滅へ

あとがき

付録@ 感染動物(と思われる動物)に咬まれた時
付録A ヒトを咬んだ動物の管理
付録B インターネットによる狂犬病情報の入手方法

引用文献

索引

著者紹介