Control of Commensal Rodents in Japan
これだけは知っておきたい 日本の家ねずみ問題
概要クマネズミ、ドブネズミ、ハツカネズミなどの“家ねずみ”は人間の家に居候をする習性を持つ。この習性によって彼らは世界中に分布を広げることができた。しかし、これは生息数や種類構成が人間社会の影響を受けやすいことを意味し、彼らの弱点ともなっている。建物の構造や食品・生ごみの管理方法だけでなく、人間の社会や経済の状況によっても生息数が増減したり、ある種類が優勢になったり劣勢になったりする。このように、家ねずみ問題には人間社会の姿が反映されている。1990年代以降、クマネズミは都心のビルだけでなく住宅街にも移り住むようになった。断熱材が巣材となり物音も吸収してくれるので、彼らは人間に気づかれずに住み着くことができる。ネズミによる各種の被害は甚大でけっして見逃せるものでない。とくに養鶏業では飼料や鶏卵などが食い荒らされるだけではなく、サルモネラ症の媒介も心配されている。また、ネズミに寄生するペストノミが全国の港湾で見つかっており、日本は今ペストにねらわれているのである。 目次はじめに 序章 家ねずみはなぜヒトに寄食するか J-1ネズミとモグラ 齧歯目 家に侵入する食虫目 かじる J-2 家ねずみと野ねずみ 越冬手段 クマネズミ ドブネズミ ハツカネズミ ナンヨウネズミ 第1章 消えた城ヶ島のネズミ 1-1 かつてはネズミの「大群」が占拠 畑にも民家にもネズミが横行 消えた畑のネズミ 1-2 ネズミのいない島へ クマネズミだらけの民家 ネズミなんて見たことがない 橋がネズミ相を変えた 1-3 愛媛県の鼠禍 大発生を促す共通の要因 鼠禍の収束 イモとイワシ 1-4 樺太の鼠禍 ササの一斉開花結実 何が成否を分けたか 第2章 都市化と家ねずみ 2-1 都市化の第一段階 家ねずみ数が減りドブネズミが優勢化 農村はクマネズミ、都市はドブネズミ 行政主導の駆除・防除運動とその破綻 家ねずみ社会の変化の仕組み 2-2 都市化の第二段階 クマネズミ復活までの過渡期 都心にクマネズミが復活 駆除・防除業界の発展と限界 札幌市街のクマネズミの消滅 スーパーラットの誕生とクマネズミの消滅 2-3 都市化の第三段階 住宅街に復活した原因 住宅街におけるネズミ問題の特殊性 第3章 農林業鼠害対策から外来種対策へ 3-1 伊豆諸島の農業被害とイタチの導入 八丈島のイタチ導入 自然保護とのジレンマ 3-2 農業被害対策と自然保護の狭間で ハワイの鼠害とマングース オーストラリアの鼠害対策 3-3 生態に基づいた鼠害対策 なぜかじられるのか 生活場所を操作する 生態に基づいた防除 3-4 外来ネズミ対策 外来ネズミ米国サミット ニュージーランドのネズミ対策 小笠原諸島のネズミ 小笠原諸島のクマネズミ根絶作戦 クマネズミが海鳥を襲うとき 第4章 ペスト媒介に果たすクマネズミの役割 4-1 クマネズミの大発生 タンカンの樹皮がかじられる 大発生の収束 タケ・ササの一斉開花結実とクマネズミ 4-2 屋内外を行き来するクマネズミ イネの収穫後に人家へ クマネズミと野ねずみの接触 4-3 クマネズミによるペストの媒介 温存された自然流行地 インドのペスト禍 クマネズミの役割 4-4 ペストにねらわれる日本 日本のペスト禍 北アメリカのペスト自然流行地 動物持ち込みの禁止 密入国するネズミ 第5章 家ねずみを減らすには 5-1 ネズミの住みにくい環境を作る 根絶しやすい不安定な個体群 食物を与えない 通路をふさぐ 防鼠構造の原点 防鼠構造 5-2 ビルのネズミ防除 集中分布するネズミ クマネズミ仲間の闘争 ネズミのいない空間作り 顧客の協力 5-3 殺鼠剤と安全性 急性殺鼠剤 慢性毒剤 剤型の問題点 5-4 殺鼠剤に対する抵抗性問題 日本のスーパーラット 欧米のスーパーラット おわりに 参考文献 索引 |