初心者のための分子モデリング
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アラン・ヒンチリフ(Alan Hinchliffe) 著
江崎俊之 訳
ISBN978-4-8052-0796-3
B5判/400頁
\6,000+税
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概要
本書は、分子モデリングを支える諸手法のうち、分子力学、統計熱力学、分子動力学、モンテカルロ法、量子力学などの基礎について解説した入門的教科書。なかでも量子力学については、古典量子論から説き起こし、ab initio 法、半経験的方法、電子相関、密度汎関数理論に至るまで詳しい取扱いがなされている。説明を簡潔にするため、数式を多く使用した。あわせて、その理解に必要な基礎的数学の解説を付録として付け加えてある。基調をなす手法については原論文に立ち戻り、その著者本人によりなされた説明を多く引用した。読者としては学部学生を想定し、特に理工系学生のための理論化学または計算化学の教科書・参考書として最適である。
目次
序 文
本書で使用した記号の一覧
第1章 序 論
1.1 化学構造の描画
1.2 三次元的効果
1.3 光学活性
1.4 プログラム・パッケージ
1.5 モデリング
1.6 分子構造データベース
1.7 ファイルの書式
1.8 三次元的表示
1.9 タンパク質
第2章 電荷とその性質
2.1 点電荷
2.2 クーロンの法則
2.3 対加成性
2.4 電場
2.5 仕事
2.6 電荷分布
2.7 相互ポテンシャルエネルギー
2.8 力と相互ポテンシャルエネルギーの関係
2.9 電気多重極
2.9.1 連続電荷分布
2.9.2 電気二次モーメント
2.9.3 さらに高次の電気モーメント
2.10 静電ポテンシャル
2.11 誘電体と誘電分極
2.12 分極率
2.12.1 分極率の性質
2.13 多体力
第3章 分子間力
3.1 二体ポテンシャル
3.2 多極展開
3.3 電荷-双極子相互作用
3.4 双極子-双極子相互作用
3.5 温度の考慮
3.6 誘起エネルギー
3.7 分散エネルギー
3.8 反発寄与
3.9 結合則
3.10 実験との比較
3.10.1 不完全気体
3.10.2 分子ビーム
3.11 改良された二体ポテンシャル
3.12 サイト間ポテンシャル
第4章 ばねでつながれた球
4.1 振動運動
4.2 力の法則
4.3 簡単な二原子分子
4.4 三つの問題
4.5 モース・ポテンシャル
4.6 さらに精巧なポテンシャル
第5章 分子力学
5.1 ばねでつながれた少し複雑な粒子系
5.2 ばねでつながれたさらに大きな粒子系
5.3 力場
5.4 分子力学
5.4.1 結合の伸縮
5.4.2 結合の変角
5.4.3 ねじれ運動
5.4.4 面外角ポテンシャル(反転)
5.4.5 非結合相互作用
5.4.6 クーロン相互作用
5.5 溶媒のモデリング
5.6 計算の時間と経費を節約するための戦略
5.6.1 融合原子
5.6.2 カットオフ
5.7 近代の力場
5.7.1 力場の変種
5.8 市販力場
5.8.1 DREIDING力場
5.8.2 MM1力場
5.8.3 MM2力場(改良版炭化水素力場)
5.8.4 AMBER力場
5.8.5 OPLS力場
5.8.6 ジョンソン力場
第6章 分子ポテンシャルエネルギー面
6.1 複数極小問題
6.2 鞍点
6.3 キャラクタリゼーション
6.4 極小点の検出
6.5 多変量格子探索法
6.5.1 一変量探索法
6.6 微分法
6.7 一次微分法
6.7.1 最急降下法
6.7.2 共役勾配法
6.8 二次微分法
6.8.1 ニュートン-ラフソン法
6.8.2 ブロック対角化ニュートン-ラフソン法
6.8.3 準ニュートン-ラフソン法
6.8.4 フレッチャー-パウエル・アルゴリズム
6.9 方法の選択
6.10 Z行列
6.11 Z行列による構造入力のこつ
6.11.1 直線構造
6.11.2 環状構造
6.12 直交座標での構造最適化
6.13 冗長内部座標
第7章 分子力学的計算
7.1 構造最適化
7.2 配座探索
7.3 定量的構造物性相関(QSPR)
7.3.1 原子部分電荷
7.3.2 分極率
7.3.3 分子の体積と表面積
7.3.4 分配係数(log P)
第8章 統計熱力学の基礎
8.1 集団(アンサンブル)
8.2 内部エネルギー
8.3 ヘルムホルツ・エネルギー
8.4 エントロピー
8.5 状態方程式と圧力
8.6 位相空間
8.7 配置積分
8.8 クラウジウスのビリアル
第9章 分子動力学
9.1 動径分布関数
9.2 対相関関数
9.3 分子動力学の方法論
9.3.1 剛体球ポテンシャル
9.3.2 有限矩形井戸型ポテンシャル
9.3.3 レナード-ジョーンズ・ポテンシャル
9.4 周期箱
9.5 時間依存性に対するアルゴリズム
9.5.1 蛙飛びアルゴリズム
9.5.2 ベルレ・アルゴリズム
9.6 溶融塩
9.7 液体水
9.7.1 その他の水ポテンシャル
9.8 各種の分子動力学
9.9 配座研究での利用
第10章 モンテカルロ法
10.1 はじめに
10.2 剛体分子のモンテカルロ・シミュレーション
10.3 柔軟な分子
第11章 量子モデリングへの序論
11.1 シュレーディンガー方程式
11.2 時間に依存しないシュレーディンガー方程式
11.3 井戸型ポテンシャル中の粒子
11.3.1 一次元の無限井戸型ポテンシャル
11.4 対応原理
11.5 二次元の無限井戸型ポテンシャル
11.6 三次元の無限井戸型ポテンシャル
11.7 相互作用しない粒子対
11.8 有限井戸型ポテンシャル
11.9 非束縛状態
11.10 自由粒子
11.11 振動運動
第12章 量子気体
12.1 エネルギーの分配
12.2 レイリー計数法
12.3 原子運動エネルギーのマクスウェル-ボルツマン分布
12.4 黒体放射
12.5 金属のモデリング
12.5.1 ドルーデ・モデル
12.5.2 パウリの取扱い
12.6 ボルツマン因子
12.7 不可弁別性
12.8 スピン
12.9 フェルミオンとボソン
12.10 パウリの排他律
12.11 ボルツマンの数え方
第13章 一電子原子
13.1 原子スペクトル
13.1.1 ボーアの理論
13.2 対応原理
13.3 無限核近似
13.4 ハートリーの原子単位
13.5 シュレーディンガーによる水素原子の取扱い
13.6 動径解
13.7 原子軌道
13.7.1 s軌道
13.7.2 p軌道
13.7.3 d軌道
13.8 シュテルン-ゲルラッハの実験
13.9 電子スピン
13.10 全角運動量
13.11 ディラックの電子論
13.12 量子世界での測定
第14章 軌道モデル
14.1 一および二電子演算子
14.2 多体問題
14.3 軌道モデル
14.4 摂動論
14.5 変分法
14.6 線形変分法
14.7 スレーター行列式
14.8 スレーター-コンドン-ショートレー則
14.9 ハートリー・モデル
14.10 ハートリー-フォック・モデル
14.11 原子遮蔽定数
14.11.1 ツェナーの波動関数
14.11.2 スレーター則
14.12 クープマンズの定理
第15章 簡単な分子
15.1 水素分子イオンH2+
15.2 LCAOモデル
15.3 楕円軌道
15.4 ハイトラー-ロンドンによる水素分子の取扱い
15.5 分子軌道法による水素分子の取扱い
15.6 ジェームス-クーリッジによる取扱い
15.7 ポピュレーション解析
15.7.1 多電子系への拡張
第16章 HF-LCAOモデル
16.1 ローターンの画期的論文
16.2 JおよびK演算子
16.3 HF-LCAO方程式
16.3.1 HF-LCAO方程式
16.4 電子エネルギー
16.5 クープマンズの定理
16.6 開殻系
16.7 非制限ハートリー-フォック・モデル
16.7.1 技術的な三つの問題点
16.8 基底関数系
16.8.1 クレメンティ-ライモンディの取扱い
16.8.2 第三周期原子への拡張
16.8.3 分極関数
16.9 ガウス型軌道
16.9.1 STO/nG
16.9.2 STO/4-31G
16.9.3 ガウス型の分極関数と拡散関数
16.9.4 拡散基底系
第17章 HF-LCAO計算の実例
17.1 出力結果
17.2 視覚化
17.3 性質
17.3.1 静電ポテンシャル
17.4 構造最適化
17.4.1 ヘルマン-ファインマンの定理
17.4.2 エネルギーの最小化
17.5 振動解析
17.6 熱力学的性質
17.6.1 理想単原子気体
17.6.2 理想二原子気体
17.6.3 回転の分子分配関数
17.6.4 振動の分子分配関数
17.7 L-フェニルアラニンへ戻って
17.8 励起状態
17.9 ブリュアン定理の意義
17.10 電場勾配
第18章 半経験的方法
18.1 ヒュッケルのπ電子理論
18.2 拡張ヒュッケル理論
18.2.1 ロアルド・ホフマン
18.3 パリサー-パール-ポープル法(PPP法)
18.4 ZDO近似
18.5 基底関数の直交化
18.6 全価電子ZDOモデル
18.7 CNDOファミリー
18.8 CNDO/2法
18.9 CNDO/S法
18.10 INDO法
18.11 NDDO法
18.12 MINDOファミリー
18.12.1 MINDO/3法
18.13 MNDO法
18.14 AM1法
18.15 PM3法
18.16 SAM1法
18.17 ZINDO/1法とZINDO/S法
18.18 有効コアポテンシャル
第19章 電子相関
19.1 電子密度関数
19.1.1 フェルミ相関
19.2 配置間相互作用
19.3 結合クラスター法(CC法)
19.4 メラー-プレセット摂動論
19.5 多配置SCF法(MC SCF法)
第20章 密度汎関数理論とコーン-シャムLCAO方程式
20.1 トーマス-フェルミ模型とXα法
20.2 ホーエンベルグ-コーンの定理
20.3 コーン-シャムLCAO方程式
20.4 数値積分(求積法)
20.5 実際の詳細
20.6 ハイブリッド汎関数
20.7 実例
20.8 応用
第21章 その他の話題
21.1 高分子のモデリング
21.2 末端間距離
21.3 高分子構造に対する初期のモデル
21.3.1 自由連結鎖モデル
21.3.2 自由回転鎖モデル
21.4 熱力学的性質の正確な計算;G1,G2およびG3理論
21.4.1 G1理論
21.4.2 G2理論
21.4.3 G3理論
21.5 遷移状態
21.6 溶媒の取扱い
21.7 ランジュバン動力学
21.8 溶媒箱
21.9 ハイブリッド法(ONIOM法)
付録:本書の理解に必要な数学的概念
A.1 スカラーとベクトル
A.2 ベクトル代数学
A.2.1 ベクトルの加法とスカラー乗法
A.2.2 直交座標
A.2.3 ベクトルの直交成分
A.2.4 ベクトルの積
A.3 スカラー場とベクトル場
A.4 ベクトル解析
A.4.1 場の微分
A.4.2 勾配
A.4.3 スカラー場の体積積分
A.4.4 線積分
A.5 行列式
A.5.1 行列式の性質
A.6 行列
A.6.1 行列の転置
A.6.2 正方行列のトレース
A.6.3 行列の代数学
A.6.4 逆行列
A.6.5 行列の固有値と固有ベクトル
A.7 角運動量
A.8 線形演算子
A.9 角運動量演算子
引用文献
訳者あとがき
索 引
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