ミジンコ先生の水環境ゼミ
生態学から環境問題を視る
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花里孝幸 著
ISBN4-8052-0772-8
四六判/272頁
\2,000+税
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概要
湖沼生態系の重要な構成員は、ミジンコなどの小さなプランクトンたちである。これらプランクトンを中心とした、生き物と生き物の間の食う-食われる関係や競争関係などの生物間相互作用を介して、水質など物理化学的環境が変化し、またそれが生き物に影響を及ぼし、水環境が作られる。こうした総合的な視点から、富栄養化や有害化学物質汚染などの水環境問題の解決法を探っていく。
目次
1時限 湖が汚れると魚が増える
第1話 見えない支配者たち―湖の生態系の特徴
第2話 澄んだ川も湖を汚す―湖が汚れるしくみ
第3話 湖が汚れると魚が増える―富栄養化の意味
第4話 水質浄化が問題を起こす―環境問題における「あちら立てればこちら立たず」
第5話 水草の良し悪し―水草を利用した水質浄化の難しさ
第6話 風が吹けば桶屋が儲かる―生物間相互作用を介した生き物たちのつながり
第7話 魚が湖の水質を変える―食物連鎖を介した魚の影響
第8話 お堀の水を汚す犯人―魚によるボトムアップ効果
2時限 有害化学物質と湖沼生態系
第1話 生き物たちの見えない敵―湖沼を汚染する有害化学物質
第2話 湖沼の「内分泌系」の攪乱―有害化学物質の新たな生態系影響
第3話 湖からのしかえし―生物濃縮が引き起こす湖沼環境問題
第4話 湖沼生態系の健康診断―汚染にさらされた生態系の症状
3時限 湖内環境と生き物たちの相互関係
第1話 生き物がつくる湖の環境―湖の生態系における作用と反作用
第2話 湖は冷水の貯蔵庫―水がつくる不均一な湖内環境
第3話 浅い湖と深い湖―湖の形状が汚れやすさを決める
第4話 湖の季節変化―湖水中の四季と生き物のくらし
第5話 貧酸素層のはたらき―湖における貧酸素層を介した生き物たちの攻防
第6話 水草がつくる湖水環境―不均一な水環境が浅い湖でつくられるしくみ
4時限 湖水の動きと水環境
第1話 温暖化と湖の環境―水温上昇が湖水環境に与える影響
第2話 湖における氷のはたらき―氷に注目して温暖化影響を考える
第3話 生き物の大きさと水環境―水の粘性がつくるプランクトンの世界
第4話 湖水が揺らぐ―風がつくる湖水の動き
第5話 湖は環境変遷の語り部―湖底堆積物から過去の環境を読みとる
第6話 湖の誕生と老齢化―湖の一生と人との関わり
5時限 湖の生物群集を調べる
第1話 生き物の数を調べる―湖水中の未知の世界の扉を開く鍵
第2話 ミジンコと藻類の関係―陸上と異なる湖水中の動植物関係
第3話 夜の湖は生き物たちの社交場―夜間調査が明かした湖水中の世界
第4話 湖の生物群集を調べる―隔離水界を用いた実験的解析
第5話 水槽を用いた生態系実験―環境教育に貢献するプランクトンたち
6時限 湖から環境問題を考える
第1話 生物多様性は低下しているか―プランクトン群集が投げかける疑問
第2話 生き物たちの生産量を考える―生態系を理解するためのひとつの鍵
第3話 プランクトンの増殖速度―湖沼の水質を考える際のキーワード
第4話 川から湖へ、そしてまた川へ―水がつなぐ川と湖の相互関係
第5話 利益と代償のバランス―生き物たちの生き方に学ぶ
第6話 蘇りはじめた諏訪湖に学ぶ―水質浄化対策とその効果
第7話 湖から環境問題を考える―自ら学び、総合的な視点を
Column●ミジンコこぼれ話
ミジンコの世界は女の天下
ところ変われば色変わる
ゾウミジンコの死んだふり作戦
ミジンコは水環境を救う?
水草にくっつくミジンコ
変身するマギレミジンコ
夜型生活のミジンコ
覆いで身を守るミジンコ
化石は語る
ミジンコの母は強し
ミジンコは形態変化の達人
脱皮の損得
水温とミジンコ
ミジンコと付着藻類の関係
つぶらな瞳の秘密
危険な満月の晩
ミジンコのタイムカプセル
水草帯はミジンコの隠れ家
ミジンコの家族計画
ミジンコに食べられて増える藻類
ミジンコの匂いが藻類の形を変える
貧酸素層への魚のダイビング
ミジンコの毛づくろい
みえないミジンコ
第一触角の役割
表面張力に捕まるミジンコ
湖の中の卵どろぼう
ワムシとミジンコの競争関係
殺虫剤の思わぬ影響
ミジンコと同じで違うワムシの形態変化
富栄養湖に適応したオナガミジンコ
温暖化で小さくなるミジンコ
後腹部突起が示す生き残り戦略
アオコの謎
春の透明期をつくる犯人
ミジンコ採集と砂糖ホルマリン
あとがき
参考文献
索引
著者紹介
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