ちょっと待ってケナフ! これでいいのビオトープ?

よりよい総合的な学習,体験活動をめざして
表紙
上赤博文 著

ISBN4-8052-0693-4

A5判/184頁

\1,800+税



概要

環境保全に役立ち様々な自然体験ができる素材として,急速に広がりつつあるケナフとビオトープ.身近な生き物を呼び戻そうと放流されるメダカやホタル.一見自然に優しいこれらの行為は,かえって環境破壊につながることもある.生物多様性保全の視点から「生き物を扱うルール」を掘り下げ,本当の環境保全活動とは何かを問う.

ケナフについてもっと理解を深めたい方へ
関連サイト=「け・ke・ケ・KE・ケナフ?」

目次

推薦の言葉 環境にやさしい行為とは? 九州大学大学院理学研究院教授 矢原徹一

序章 ちょっと待ってケナフ! これでいいのビオトープ?

第1章 なぜケナフは注目されているの?
 1 ケナフってどんな植物?
  ケナフの種類
  ケナフ栽培と成長
 2 ケナフを取りまく多様な話題
  ケナフが地球を救う
  体験活動が子どもたちの心をいやす
  ケナフを通じて環境意識が高まってきた

第2章 広がるケナフの輪
 1 新聞に掲載されたケナフニュース
  全国ニュース
  佐賀県ニュース
 2 全国各地に次々できるケナフの会
 3 総合的な学習・環境教育の旗手として

第3章 ケナフの疑問〜帰化の危険性〜
 1 無秩序にばらまかれるケナフの種子
 2 栽培しやすいのに野生化しにくい?
  冬に弱いと自生できない?
  栽培植物は野生化しない?
 3 帰化の可能性
  種子形成と発芽率について
  旺盛な繁殖力について
  熱帯植物の危険性について
 4 ケナフ栽培は確実に管理できる場所で
 5 正しい情報、責任ある活動を!

第4章 ケナフは本当に地球に優しいか?
 1 地球温暖化の救世主?
  二酸化炭素の収支を考えてみよう
  土壌浸食についても考えよう
 2 森林破壊を止められる?
  ケナフと森林で収穫量を比べてみる
  まず取り組みたいのは、リユース・リサイクル
 3 水質汚濁の特効薬?
 4 土壌を改善する?
 5 ケナフをめぐる様々な議論
  インターネットにおける議論
  雑誌での議論
  ケナフサミット(広島県安浦町)での議論
  その後の議論

第5章 外来種って、何?
 1 外来種が日本の生態系を破壊する
  世界規模で進む「植生の均質化」
  外来種問題は地球規模の環境問題
 2 帰化植物
  帰化植物の定義
  帰化植物の区分
   <1> 新帰化植物
   <2> 史前帰化植物
  代表的な帰化植物の現状
   <1> 外来タンポポ
   <2> セイタカアワダチソウ
   <3> ホテイアオイ
   <4> その他の帰化植物と帰化率
 3 帰化動物
   <1> アメリカシロヒトリ
   <2> カムルチー、ウシガエル、アメリカザリガニ
   <3> オオクチバス、コクチバス
   <4> カダヤシ
   <5> ミシシッピーアカミミガメ
   <6> そのほかの帰化動物
  4 外来種問題は私たち人間の心の問題

第6章 国際的に保全が叫ばれている生物多様性
 1 レッドデータブック
 2 生物多様性とは
 3 生物多様性の保全を目的とした学問分野「保全生態学」
 4 地球サミットと生物多様性条約

第7章 善意が引き起こす環境破壊
 1 ホタルの里づくり
  遺伝子攪乱
  持ってくる前に、環境を整えることを始めよう
 2 コイを放して環境浄化?
  善意の行為として報道されるコイの放流
  河川の汚染をコイでごまかしてはいけない
 3 絶滅危惧種メダカを救おう
  田んぼが育んだ魚・メダカが消えた背景
  メダカにもある遺伝的な地域差
 4 ビオトープの功罪
  水辺への危機感から注目されたビオトープ
  造園とビオトープは違うはずだが…
  ビオトープがもたらす移入種問題
 5 広がる学校ビオトープ
  「総合的な学習」の目玉として急速に拡大
  自然体験の場として進むべき方向は?

第8章 これからの体験活動を考える
 1 学校における「総合的な学習」の活用意義
 2 ケナフの活用
  体験活動として
  環境教育のきっかけとして
   <1> 外来種問題
   <2> 地球温暖化
   <3> 環境浄化素材として
   <4> 環境問題の輸出
  研究素材として
   <1> 種子を使って
   <2> 花を使って
  環境改善の素材として
   <1> ビルの断熱効果
   <2> 土壌改良

おわりに −生き物を扱う「ルール」を考える

 参考文献
 さくいん