野生動物問題

表紙
羽山伸一

ISBN4-8052-0689-6

四六判/256頁

\2,200+税



概要

野生動物と人間との関係性にある問題を「野生動物問題」と名付け,放浪動物問題,野生動物被害問題,餌付けザル問題,商業利用問題,環境ホルモン問題,移入種問題,絶滅危惧津種問題について,最近話題になった事例を取り上げ,社会や研究者などがとった対応を検証しつつ,問題の理解や解決に必要な基礎知識を示すように努めた。

目次

はじめに

第1章 放浪動物問題
 1 私たちは自然をどうとらえているか
  都心にサル現る
  サルが都会にいてはいけないか
  サルは山の動物か
  自然に対する時間軸
  棲み分けの思想
  緑の回廊(コリドー)
 2 「野生」に対する人間の管理責任
  麻布のサルは野生か
  ペット逃亡説
  野生ザル遺棄説
  なぜ由来が問題なのか
  DNA鑑定
  出身は南アルプス
  タライ回しにされる動物たち

第2章 野生動物被害問題
 1 シシ垣の再評価
  宿命的な被害問題
  歴史から学ぶ被害対策
  シシ垣の今
  公共事業としての被害対策
  棲み分け思想の復権
  ゾーニングの問題点
 2 ワイルドライフマネジメント
  鳥獣保護法改正
  法改正で何が期待されたのか
  保護管理とは何か
  なぜ捕獲規制がクローズアップされたのか
  創設された計画制度に仕組まれたもの
  市民参加と被害対策
 3 シカ問題
  尾瀬のシカ問題
  山に登ったシカたち
  丹沢の教訓
  シカを山から降ろす
  「適正頭数」とは何か
  個体数管理で被害はなくなるか

第3章 餌付けザル問題
  温泉ザル間引き計画
  餌付けザルの歴史
  なぜ餌付けをすると個体数が増えるのか
  餌付け禁止条例
  苦し紛れの避妊処置
  野生動物に避妊処置は許されるのか
  避妊処置の拡大
  コアラの避妊処置
  アメリカでのガイドライン
  違法捕獲発覚事件
  野生動物を実験に使ってよいか
  餌付けザルの将来

第4章 商業利用問題
 1 ワシントン条約と密輸問題
  オランウータンの帰国
  ワシントン条約
  なぜ地球規模の意思決定が必要なのか
  国内取引の規制は必要ないか
  なぜ違法取引が阻止できないのか
  国内法の問題点
 2 クジラ問題
  マッコウクジラの座礁
  なぜクジラを埋めてしまったのか
  野生生物利用の原則
  クジラはだれのものか
  科学至上主義で合意できるか
  マッコウクジラの調査捕鯨
  海洋生態系管理の試金石

第5章 環境ホルモン問題
  アザラシの大量死
  新種のウイルスと環境汚染
  環境ホルモン・パニック
  環境ホルモンの影響をどのように評価するか
  野生動物調査の難しさ 
  野生動物から見た環境ホルモン問題

第6章 移入種問題
  雑種ザルの発見
  移入種はなぜ問題か
  なぜ移入種問題は放置されてきたか
  移入種問題をどう考えるか
  ニュージーランドの取り組み
  日本の現状
  動物福祉と移入種問題

第7章 絶滅危惧種問題
  トキの誕生
  生息域外保全
  動物園の役割
  レッドリスト
  種の保存法の問題点
  コウノトリの野生復帰
  豊岡での多様な取り組み
  破壊から保護の時代へ

あとがき
索引