化学者のための薬理学
Pharmacology for Chemists
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J.G.キヤノン著 江崎俊之訳
ISBN4-8052-0686-1
A5判/384頁
\5,600+税
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概要
医薬品化学の研究には,化学の専門知識と生物学・薬理学を融和させなければならない.したがって,医薬品化学においては,薬理学の一側面,とくに物理化学的側面,分子レベルでの作用機序および代謝を明らかにすることが重要である.本書では,化学を土台とし,その上に生理学や解剖学の初歩と薬理学の実用的知識を解説した.
目次
はじめに
第I部 薬理学の化学的および生物学的基礎
第1章 薬理学の一般概念
1.1 生体膜
1.1.1 膜の構造
1.1.2 イオンチャンネル
1.1.3 流動モザイク膜モデル
1.1.4 膜構造の化学的詳細
1.2 水:構造と薬理学的意義
1.3 薬物の溶出
1.4 有機分子の膜透過
1.4.1 受動拡散
1.4.2 能動輸送
1.4.3 速度論のタイプ
1.4.4 飲作用
1.5 疎水性,親水性および分配係数
1.6 薬物の吸収と輸送
1.6.1 薬物の酸性度と塩基性度の重要性
1.6.2 絨毛の役割
1.6.3 薬物の吸収に影響を及ぼすその他の因子
1.6.4 その他の吸収部位
1.6.5 薬物の分布
1.6.6 血漿タンパク質への薬物の結合
1.7 血液脳関門
1.7.1 生理学
1.7.2 関門と有機小分子
1.7.3 関門とタンパク質およびペプチド
1.7.4 血液脳関門に影響を及ぼす外部因子
1.8 胎盤膜を横切る輸送
1.9 薬物とその代謝物の貯蔵部位
第2章 薬物動態学
2.1 生物学的利用能
2.2 コンパートメント
2.3 クリアランス
2.4 分布容積
2.5 一次消失速度論
2.6 生物学的半減期
2.7 複合吸収消失モデル
2.8 非線形薬物動態学
第3章 薬物の代謝
3.1 生体異物の代謝
3.2 腎臓の微細解剖学的構造と機能
3.3 薬物の排泄における腎臓の役割
3.3.1 糸球体濾過と尿細管再吸収
3.3.2 尿細管分泌
3.3.3 尿細管再吸収に及ぼすpHの影響
3.4 薬物とその代謝物の腎臓外排泄経路
3.5 望ましくない代謝的結果
3.5.1 致死合成
3.5.2 難溶性代謝物
3.6 鏡像体間における代謝的運命の差
3.7 生体内薬物代謝
3.7.1 肝ミクロソーム代謝
3.7.2 初回通過代謝
3.7.3 酵素誘導
3.7.4 薬物動態耐性
3.7.5 薬物による代謝酵素の阻害
3.8 薬物代謝の化学的側面
3.8.1 第I相薬物代謝(官能基化反応)
3.8.1.1 酸化
3.8.1.2 還元
3.8.1.3 エステルとアミドの加水分解型開裂
3.8.2 第II相薬物代謝(抱合反応)
3.8.2.1 アセチル化
3.8.2.2 グルクロン酸抱合と硫酸抱合
3.8.2.3 アミノ酸抱合
3.8.2.4 グルタチオン抱合
3.9 薬物代謝の動物種差
3.10 ヒトにおける薬物代謝の遺伝的変異
3.11 薬物代謝の年齢差と性差
第4章 薬物受容体
4.1 受容体部位と薬物結合部位
4.1.1 用語の定義
4.1.2 受容体の単離
4.1.3 受容体の化学的性質
4.1.4 薬物-受容体相互作用
4.1.4.1 薬物-受容体相互作用の化学的様式
4.1.5 受容体の不斉性:3点取付け仮説
4.2 構造非特異的薬物と構造特異的薬物
4.3 作動薬と拮抗薬:薬物作用の占有理論
4.3.1 占有の定義
4.3.2 親和性と固有活量
4.3.3 占有理論の弱点
4.4 作動薬と拮抗薬:薬物作用の速度理論
4.5 競合的拮抗薬と非競合的拮抗薬
4.6 誘導適合
4.7 不完全作動薬と逆作動薬
4.8 薬物受容体としての酵素
4.8.1 酵素阻害のタイプ
4.8.2 薬理学における酵素反応速度論
4.8.3 遷移状態類似体
4.8.4 活性部位特異的不可逆阻害薬
4.8.5 自殺基質
第5章 薬理試験の原理
5.1 親和性(結合)試験
5.1.1 原理
5.1.2 妥当性の判定基準
5.1.3 高効率自動試験
5.1.4 細胞試験
5.2 生体反応の定量化
5.2.1 用量-反応曲線
5.2.2 生物学的変動
5.2.3 薬理試験の種類と用途
5.3 タキフィラキシー:薬物耐性
5.4 蓄積
5.5 有効量の定量的説明
5.6 競合的拮抗作用と非競合的拮抗作用の識別
5.7 悉無型試験
5.8 治療係数
5.8.1 用量-反応曲線の勾配
5.8.2 治療係数表現の難点
5.8.3 臨床的意味
5.9 用量の数値表現
第II部 末梢および中枢神経系
第6章 神経系の解剖学的構造と生理学の基本概念
6.1 神経系とその関連効果器官の解剖学的構造と機能
6.1.1 神経細胞
6.1.2 脳
6.1.3 脊髄
6.1.4 末梢神経と脊髄
6.1.5 運動神経と筋肉の生理学的分類
6.1.6 神経インパルスの伝導
6.1.7 回復のプロセス
6.1.8 髄鞘
6.2 シナプスを介した神経インパルスの伝達
6.2.1 シナプスの解剖学的構造
6.2.2 化学物質による仲介
6.3 自律神経系への序論
6.3.1 生理学的側面
6.3.2 シナプス後およびシナプス前受容体
6.3.3 自律神経系の生化学的分類
第7章 ノルアドレナリンおよびドーパミン作動性神経系
7.1 ノルアドレナリン作動系
7.1.1 ノルアドレナリン作動性節後神経終末
7.1.2 ノルアドレナリン作動性神経伝達物質の生合成
7.1.3 ノルアドレナリン作動性神経伝達物質の酵素的不活性化
7.1.3.1 カテコール-O-メチル転移酵素
7.1.3.2 モノアミン酸化酵素
7.1.4 フェニルケトン尿症
7.1.5 ノルアドレナリン受容体の分類
7.1.5.1 アドレナリンβ受容体のサブタイプ
7.1.5.2 アドレナリンα受容体のサブタイプ
7.1.6アドレナリンβ受容体の生化学
7.1.7アドレナリンα受容体の生化学
7.1.8 直接,間接および混合作用型アドレナリン作動薬
7.1.9 イミダゾリン類
7.1.10 アドレナリン受容体刺激薬の治療的用途
7.1.11 アドレナリン遮断薬
7.1.12 交感神経遮断薬:神経終末におけるノルエピネフリンの枯渇
7.2 ドパミン作動系
7.2.1 生理学
7.2.2 パーキンソン症候群
7.2.2.1 病因
7.2.2.2 パーキンソン病の薬物療法
7.2.2.3 パーキンソン病患者におけるドパの副作用
7.2.2.4 ドパ療法の問題点
7.2.2.5 カルビドパ
第8章 コリン作動系
8.1 アセチルコリン不活性化酵素
8.2 コリン作動性神経終末の構造と生理学
8.3 アセチルコリン受容体の種類
8.3.1 薬理学的分類
8.3.2 アセチルコリン受容体の化学的性質
8.4 ムスカリン受容体の作動薬と不完全作動薬
8.5 ニコチン様作動薬
8.5.1 ニコチンの薬理学
8.5.2 ニコチン受容体刺激薬の今後の治療的用途
8.6 間接作用型コリン作動薬
8.6.1 アセチルコリンエステラーゼとコリンエステラーゼの阻害薬
8.6.1.1 アセチルコリンの酵素加水分解
8.6.1.2 アセチルコリンエステラーゼとコリンエステラーゼの阻害薬
8.6.2 アセチルコリン遊離促進薬
8.7 アセチルコリン受容体刺激薬の治療的用途
8.8 ニコチン受容体遮断薬
8.8.1 神経節遮断薬
8.8.2 神経筋遮断薬
8.8.2.1 神経筋遮断薬の用途
8.8.2.2 神経筋遮断薬のin vivo運命
8.9 ムスカリン受容体遮断薬
8.9.1 ムスカリン受容体遮断薬の末梢作用
8.9.2 ムスカリン受容体遮断薬の中枢作用
8.10 認知機能不全:アルツハイマー症候群
第9章 中枢神経系I:向精神薬
9.1 中枢神経系の薬理学で一般に使用される用語
9.2 中枢神経系における神経伝達物質の生化学と生理学
9.2.1 セロトニン(5-ヒドロキシトリプタミン,5-HT),ブホテニン,メラトニン
9.2.1.1 セロトニンとブホテニン
9.2.1.2 メラトニン
9.2.1.3 セロトニン受容体
9.2.2 γ-アミノ酪酸(GABA)
9.2.3 グルタミン酸
9.2.4 グリシン
9.2.5 アスパラギン酸
9.2.6 アデノシンとアデノシンリン酸エステル類
9.2.7 ヒスタミン
9.2.8 性腺ステロイドホルモン類
9.2.9 一酸化窒素
9.2.10 ペプチド系神経伝達物質
9.2.11 神経伝達物質の生理学的な相互関係
9.3 脳の各部位の機能
9.4 向精神薬候補の動物スクリーニング
9.5 抗うつ薬
9.6 コカイン
9.7 気分安定薬
9.8 抗不安薬
9.9 抗精神病薬
第10章 中枢神経系II:鎮静薬と催眠薬
10.1 定義
10.2 急速眼球運動睡眠
10.3 エタノール
10.4 非バルビツレート,非ベンゾジアゼピン系の鎮静薬と催眠薬
10.5 ベンゾジアゼピン類
10.6 バルビツレート類
10.6.1 二日酔い
10.6.2 バルビツレート類の薬理学的分類
10.6.3 バルビツレート中毒
第11章 鎮痛薬I:生理学的および生化学的側面
11.1 痛みと鎮痛
11.2 動物とヒトにおける鎮痛薬の効力評価
11.3 痛みの発生と認知の生理学的および生化学的側面
11.4 非麻薬性鎮痛薬と非ステロイド系抗炎症薬
11.4.1 サリチレート系抗炎症鎮痛薬
11.4.1.1 代謝と排泄
11.4.1.2 その他のサリチレート系薬物
11.4.2 炎症症候群
11.4.2.1 プロスタグランジン
11.4.2.2 抗炎症鎮痛薬の作用機序
11.4.2.3 胃に対する抗炎症鎮痛薬の副作用
11.4.2.4 ライ症候群
11.4.2.5 非サリチレート系抗炎症鎮痛薬
11.4.3 コールタール鎮痛薬
11.4.3.1 コールタール鎮痛薬の慢性毒性
11.4.3.2 コールタール鎮痛薬の解熱作用
11.4.4 痛みの分類
11.4.5 カプサイシン
第12章 鎮痛薬II:オピオイド鎮痛薬
12.1 用語について
12.2 モルヒネ様鎮痛薬
12.3 オピオイド薬物の拮抗薬
12.4 鎮痛受容体
12.4.1 κ作動薬,ペンタゾシン
12.5 鎮痛受容体の内因性作動薬
12.6 エンドルフィンとオピオイドの鎮痛作用機序
12.7 オピオイドと鎮痛ペプチドの耐性と依存性
12.8 内因性鎮痛物質の生理学的意味
第13章 全身および局所麻酔薬
13.1 全身麻酔薬
13.1.1 吸入麻酔薬
13.1.2 静脈麻酔薬
13.2 局所麻酔薬
第III部 末梢器官系の薬理学
第14章 心血管系I:解剖学的構造と生理機能,高血圧症,高脂血症/アテローム性動脈硬化症および心筋梗塞
14.1 心臓の解剖学的構造と生理機能
14.2 高血圧症
14.2.1 血圧の生理的調節
14.2.2 高血圧症の臨床的カテゴリー
14.2.3 高血圧症の治療への挑戦と戦略
14.2.4 抗高血圧症薬
14.2.4.1 利尿薬
14.2.4.2 交感神経遮断薬
14.2.4.3 血管拡張薬
14.2.4.4 アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬
14.3 高脂血症/アテローム性動脈硬化症
14.3.1 病理学
14.3.2 リポタンパク質の化学と生理学
14.3.3 高脂血症の薬物療法
14.4 心筋梗塞
14.4.1 血液凝固の生理学
14.4.2 抗凝血薬
14.4.3 血栓溶解薬
14.4.4 抗血小板薬
第15章 心血管系II:不整脈と心筋虚血
15.1 不整脈
15.1.1 病理学
15.1.2 不整脈の薬物療法
15.1.2.1 クラスI抗不整脈薬
15.1.2.2 クラスII抗不整脈薬
15.1.2.3 クラスIII抗不整脈薬
15.1.2.4 クラスIV抗不整脈薬
15.2 心筋虚血
15.2.1 病理学と病因学
15.2.2 狭心症の薬物療法
第16章 心血管系III:うっ血性心不全と利尿薬
16.1 うっ血性心不全
16.1.1 病因学
16.1.2 強心配糖体の化学構造と薬理学的効果
16.1.3 ジギタリス受容体
16.1.4 強心配糖体の作用機序
16.1.5 強心配糖体の薬理学的に重要な物理化学的性質
16.1.6 強心配糖体の臨床的側面
16.1.7 その他のうっ血性心不全治療薬
16.2 利尿薬
16.2.1 腎臓の解剖学的構造と生理学:尿の生成
16.2.2 各種利尿薬とその利尿機序
16.2.2.1 体内の酸塩基平衡を変化させる利尿薬
16.2.2.2 尿細管輸送機構を変化させる利尿薬
16.2.2.2.1 水銀利尿薬
16.2.2.2.2 Na+-Cl−共輸送阻害薬
16.2.2.2.3 Na+-K+-2Cl−共輸送阻害薬
16.2.2.2.4 アルドステロン拮抗薬
16.2.2.2.5 その他のカリウム保持性利尿薬
16.2.2.2.6 キサンチン類
第17章 ヒスタミンが関与する疾患の薬理学:アレルギー,喘息および胃分泌過多
17.1 アレルギー
17.1.1 免疫応答
17.1.2 ヒスタミンに由来するアレルギー反応
17.1.3 アレルギーとヒスタミンH1受容体
17.1.4 アナフィラキシー
17.1.5 H1受容体拮抗薬による治療
17.2 気管支喘息
17.2.1 生理学
17.2.2 喘息の薬物療法
17.3 胃分泌過多
17.3.1 胃腸の生理学
17.3.2 消化性潰瘍
17.3.3 消化性潰瘍の薬物療法
17.3.3.1 ビスマス化合物
17.3.3.2 H2受容体拮抗薬
17.3.3.3 H+/K+ ATPアーゼ阻害薬
17.3.3.4 胃壁コーティング薬
用語集
訳者あとがき
索引
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