放射線物理と加速器安全の工学
第2版
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中村 尚司著
ISBN4-8052-0685-3
B5判/528頁
\7,000+税
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概要
放射線や放射能生成には様々な原子核反応が伴い,生成された放射線が物質中で相互作用を起こすため,その伝播と振る舞いはきわめて複雑である.本書は,これらの放射線,特に中性子線と光子の物質中での挙動や遮蔽,その計測や実務上の安全管理を専門的な最新の情報を含めてわかりやすくまとめた.
目次
第1章 放射線と物質の相互作用
1-1 放射線の定義
1-2 質量とエネルギー
1-3 質量欠損と結合エネルギー
1-4 放射線源と放射線の種類
(1) 放射性壊変(radioactive decay または disintegration)
(2) 逐次壊変
(3) 放射平衡
(4) α壊変(α線放射)
(5) β壊変(β線放射)
(6) γ壊変(γ線放射)
(7) X 線
(8) 中性子
1-5 放射線と物質との相互作用
1-6 荷電粒子と物質との相互作用
(1) 相互作用の種類
(2) 衝突過程の kinematics
(3) 阻止能(stopping power)
(4) 阻止能と線エネルギー付与(LET, linear energy transfer)
(5) 重い荷電粒子の飛程
(6) 電子の飛程
(7) 制動放射(bremsstrahlung)
(8) 放射エネルギー損失と放射長(radiation length)
(9) チェレンコフ放射
(10) クーロン場による散乱(弾性散乱)
1-7 光子と物質との相互作用
(1) 極微少過程
(2) 微少過程
(3) 光電効果(photoelectric effect)
(4) コンプトン散乱(Compton scattering, incoherent scattering)
(5) 電子対生成
(6) 陽電子の消滅
(7) 吸収の全断面積
1-8 中性子と物質との相互作用
(1) 断面積
(2) エネルギーと運動量の保存
(3) 複合核
(4) 核反応におけるチャンネルの概念
(5) 弾性散乱によるエネルギー損失
(6) 非弾性散乱
(7) 捕獲
(8) 核変換
(9) 核分裂
(10) 中性子のエネルギーによる分類
第2章 放射線の量と単位
2-1 線源の強度と粒子束
2-2 エネルギー吸収と線量
(1) 付与エネルギー(energy imparted)
(2) 吸収線量(absorbed dose)
(3) 照射線量(exposure)
(4) 照射線量と空気吸収線量との関係
(5) カーマ(kerma)
(6) カーマと吸収線量の関係
2-3 吸収線量の測定――空洞理論
(1) 空洞が小さい時
(2) 空洞が大きい時
(3) 空洞が中間の大きさの時
2-4 防護のための線量の諸量
(1) 線量当量(dose equivalent, H)
(2) 等価線量(equivalent dose, HT)
(3) 実効線量当量(effective dose equivalent, HE)と
実効線量(effective dose, E)
(4) モニタリングのための実用量
(5) 場の測定に用いる線量当量
(6) 個人の測定に用いる線量当量
(7) 線量換算係数と相互比較
(8) 法令で定められた放射線防護のための諸量
(9) 預託等価線量(committed equivalent dose, HT(τ))と
預託実効線量(committed effective dose, E(τ))
第3章 放射線の物質による減衰
3-1 γ線の物質中での減衰
(1) 一次γ線(直接線)の減衰計算
(2) 二次γ線(散乱線)を含む計算
(3) 点減衰核法
(4) 実効線量の計算法
3-2 中性子の物質中での減衰
3-3 制動放射線の物質中での減衰
3-4 後方散乱
(1) γ線と中性子のアルベド
(2) 後方散乱線束・線量の計算
3-5 ダクトストリーミング
(1) 直線状ダクト
(2) 屈曲ダクト
3-6 遮蔽材料
(1) β線遮蔽
(2) γ線遮蔽
(3) 中性子遮蔽
第4章 放射線の計測
4-1 γ線エネルギースペクトルの測定
(1) シンチレーションスペクトロメータ
(2) Ge 半導体検出器
4-2 中性子エネルギースペクトルの測定
(1) 有機シンチレータ
(2) 反跳陽子比例計数管
(3) 3He 比例計数管
(4) 多減速材付検出器(ボナーカウンタ)
(5) 放射化検出器
(6) 飛行時間分析(TOF)法
(7) カウンターテレスコープ
(8) その他の測定器
4-3 γ線空間線量の測定
(1) 線量測定法
(2) 1 cm 線量当量 H1cmの測定
(3) 電離箱による吸収線量(組織吸収線量)の測定
(4) 環境モニタリング
4-4 中性子空間線量の測定
(1) 線量測定法
(2) 組織等価型検出器による線量当量の測定
(3) レムカウンタによる線量当量の測定
4-5 γ線個人線量の測定
(1) 測定方法
(2) フィルムバッジ
(3) TLD(熱蛍光線量計、thermo-luminescent dosimeter)
(4) ポケット線量計
(5) ガラス線量計
(6) シリコン線量計
(7) OSL 線量計
(8) DIS(Direct Ion Strage)線量計
4-6 中性子個人線量の測定
(1) フィルムバッジ
(2) TLD アルベド型線量計
(3) 固体飛跡検出器
(4) バブル線量計
(5) シリコン半導体線量計
第5章 加速器の種類と利用の現状
5-1 共振変圧器型加速器(電子線発生装置)
5-2 X 線発生装置
5-3 ベータトロン
5-4 リニアック(線形加速器)
5-5 マイクロトロン
5-6 サイクロトロン
5-7 小型(ベビー)サイクロトロン
5-8 コッククロフト‐ワルトン型加速器
5-9 バンデグラフ型加速器
5-10 イオン注入・照射装置
5-11 微量元素分析装置
5-12 強力中性子源
5-13 シンクロトロン
5-14 電子貯蔵リング(放射光施設)
5-15 自由電子レーザー
5-16 RI ビームファクトリ
5-17 がん治療用陽子・重イオン加速器
第6章 加速器施設の安全設計の考え方
6-1 放射線遮蔽設計の考え方
6-2 障害防止法令による安全規制
6-3 安全管理システム
6-4 放射化物の取扱いについて
第7章 加速器からの放射線と放射能の生成
7-1 概要
7-2 ビーム損失量の評価
7-3 放射線源の評価――陽子・イオン加速器の場合
(1) 中性子生成断面積データ
(2) 中性子生成量
7-4 放射線源の評価――電子加速器の場合
7-5 放射化による放射能の生成
(1) 低、中エネルギー荷電粒子(電子を除く)による放射化
(2) 高エネルギー反応による放射化
(3) 電子による放射化
(4) 中性子による放射化
第8章 加速器施設の遮蔽設計計算法の概要
8-1 バルク運転
(1) 陽子加速器
(2) 電子加速器
8-2 ストリーミング
(1) 迷路からのストリーミング
(2) 迷路終端部の扉による中性子、二次γ線の減衰
8-3 スカイシャイン
(1) γ線スカイシャイン
(2) 中性子スカイシャイン
8-4 放射化
(1) 機器の放射化
(2) 空気の放射化
(3) 水および土の放射化
(4) コンクリートの放射化
第9章 放射線の輸送計算(I)――輸送方程式
9-1 ボルツマン輸送方程式の導出
(1) γ線および中性子の物質透過の問題に対する輸送理論の応用
(2) 粒子伝播に関する時間に独立なボルツマンの輸送方程式
9-2 単一エネルギー粒子に対するボルツマンの輸送方程式
(1) 球面調和関数展開(spherical harmonics expansion)による解
(2) 離散型座標展開(discrete ordinate expansion)による解
9-3 球座標における輸送方程式
9-4 多群輸送方程式とその積分形
第10章 放射線の輸送計算(II)――モンテカルロ法
10-1 確率変数
(1) 離散型確率過程
(2) 連続型確率過程
(3) 確率変数の求め方
10-2 ランダム歩行問題における分散減少法
(1) アナログ型モンテカルロ法
(2) ノンアナログ型モンテカルロ
10-3 放射線の物質内輸送現象への応用
(1) 線源の決定
(2) 飛行距離の決定
(3) 新しい空間座標の決定
(4) 体系内かどうかの決定
(5) 衝突の決定
(6) 衝突後の新しい方向座標の決定
(7) 考えている領域における結果の貯蔵
10-4 衝突過程の取扱い
(1) 中性子
(2) 光子
10-5 輸送方程式とモンテカルロ法の関係
10-6 電磁カスケードモンテカルロ
10-7 ハドロンカスケードモンテカルロ
(1) 核構造モデル
(2) 飛程、衝突点、衝突反応の種類および衝突された粒子の運動量のサンプリング法
(3) モンテカルロ法による蒸発過程の計算法
参考書
参考文献
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