分子モデリング

基本原理と創薬への応用
表紙
H.-D.ヘルツェ著
G.フォルカース著
江崎俊之訳

ISBN4-8052-0593-8

A5判/256頁

\8,400+税



概要

本書の目的は,分子のモデルを作る理論的計算や3次元的な映像化と操作が,単に分子を眺め,その美しい写真を撮るだけではなく,薬物作用のような分子的相互作用に対して,新しいアイデアと信頼に足る作業仮説を得るために,いろいろな場面で実際に活用できることを示すことにある.

目次

はじめに

第1章 序論
 1.1 分子モデリングの近代史
 1.2 現代の分子モデリング法は
    単にルクレティウスの世界を説明できるにすぎないのか?
 1.3 モデルは何のために利用されるのか?
 1.4 分子モデリングは4種のモデル様式をすべて使用する
 1.5 最終段階は設計である
 1.6 本書の目的

第2章 小分子
 2.1 3D座標の生成
  2.1.1 結晶データ
  2.1.2 部分構造ライブラリー
  2.1.3 スケッチ・アプローチ
 2.2 構造最適化のための計算手段
  2.2.1 力場
  2.2.2 構造最適化
  2.2.3 エネルギー極小化法
   2.2.3.1 最大傾斜法
   2.2.3.2 共役勾配法
   2.2.3.3 Newton-Raphson法
  2.2.4 電荷と溶媒和効果の問題
  2.2.5 量子力学的方法
   2.2.5.1 abinitio法
   2.2.5.2 半経験的分子軌道法
 2.3 配座解析
  2.3.1 系統的な探索法を利用した配座解析
  2.3.2 モンテカルロ法を利用した配座解析
  2.3.3 分子動力学を利用した配座解析
 2.4 分子相互作用ポテンシャルの決定
  2.4.1 分子静電ポテンシャル(MEP)
   2.4.1.1 原子点電荷の計算法
   2.4.1.2 MEPの生成法
  2.4.2 分子相互作用場
   2.4.2.1 GRID場の計算
   2.4.2.2 GRID場の利用法
   2.4.2.3 計量化学の利用:CoMFA法
  2.4.3 疎水相互作用
   2.4.3.1 疎水性の尺度としてのlogP
   2.4.3.2 ヒドロパシー場
   2.4.3.3 分子表面への性質の表示
 2.5 薬理作用団の同定
  2.5.1 突き合わせる分子
  2.5.2 1原子ずつの重ね合わせ
  2.5.3 分子場の重ね合わせ
 2.6 データバンクの利用
  2.6.1 2D形式から3D形式への構造データの変換
  2.6.2 3D探索

第3章 小分子のモデリング例:セロトニン受容体リガンド類
 3.1 セロトニン作動性薬理作用団の定義
 3.2 分子相互作用場
 3.3 5-HT2a受容体結合部位モデルの構築
 3.4 相互作用エネルギーの計算
 3.5 モデルの吟味

第4章 タンパク質モデリングへの序論
 4.1 タンパク質に関する情報の入手方法
 4.2 タンパク質構造の用語と原理
  4.2.1 タンパク質の配座的性質
  4.2.2 二次構造要素の類型
   4.2.2.1 αヘリックス
   4.2.2.2 βシート
   4.2.2.3 ターン
  4.2.3 相同タンパク質
 4.3 知識依拠型タンパク質モデリング
  4.3.1 配列並置の手順
  4.3.2 構造不変領域(SCR)の確定と生成
  4.3.3 構造可変領域(SVR)の構築
  4.3.4 側鎖のモデリング
  4.3.5 距離ジオメトリー法
  4.3.6 二次構造の予測
  4.3.7 エネルギー依拠型モデリング法
 4.4 最適化操作−モデルの精密化−分子動力学
  4.4.1 タンパク質モデリングのための力場
  4.4.2 構造最適化
  4.4.3 分子動力学シミュレーションを利用したモデルの精密化
  4.4.4 溶媒和系の取扱い
  4.4.5 リガンド-結合部位複合体
 4.5 タンパク質モデルの吟味
  4.5.1 立体化学的な精度
  4.5.2 充填特性
  4.5.3 折りたたみ構造の信頼性
 4.6 タンパク質の性質
  4.6.1 静電ポテンシャル
  4.6.2 相互作用ポテンシャル
  4.6.3 疎水性

第5章 タンパク質-リガンド複合体のモデリング例:クラスIMHCによる抗原提示
 5.1 問題の生化学的および薬理学的記述
  5.1.1 抗原性タンパク質はノナペプチドの形で提示される
  5.1.2 薬理学的標的:自己免疫反応
 5.2 ウイルスペプチドとクラスIMHC糖タンパク質の間で形成される
    抗原複合体の分子モデリング
  5.2.1 リガンドのモデリング
  5.2.2 MHCタンパク質の相同性モデリング
   5.2.2.1 座標の作成
   5.2.2.2 H-2Ld分子の構築
 5.3 MHC-ペプチド複合体の分子動力学研究
  5.3.1 HLA-A2―分子動力学シミュレーションの間の複合体の運命
  5.3.2 HLA-B*2705
   5.3.2.1 分子動力学シミュレーションの間の複合体の運命
 5.4 分子動力学シミュレーションから得られたモデルの解析
  5.4.1 水素結合網
  5.4.2 原子ゆらぎ
  5.4.3 溶媒接触可能表面積
  5.4.4 相互作用エネルギー
 5.5 分子動力学シミュレーションから得られた抗原性ペプチド類のSAR
   およびクラスI MHCタンパク質に対する高親和性リガンドとしての
   非天然ペプチド類の設計
  5.5.1 新しいリガンド類の設計
  5.5.2 設計されたリガンドの実験的吟味
 5.6 要約および結論

付録
 付録1 IXGROSプログラム
 付録2 ベンズアミジン阻害薬と複合体を形成したトリプシンの
     Brookhavenデータファイル

 訳者あとがき
 索引