サクラソウの目
−保全生態学とは何か−
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鷲谷いづみ著
ISBN4-8052-0575-X
四六判/240頁
\2,000+税
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概要
環境庁発表の植物版レッドリストには,秋の七草のフジバカマやキキョウなど身近な野草が絶滅危惧植物として掲げられている.その中の一つサクラソウを主人公に,野草の暮らしぶりや花の適応進化,虫や鳥とのつながりを生き生きと描き出し,野の花と人間社会の共存の方法を探っていく.
目次
プロローグ
1章 サクラソウとの出逢い ―― 花の多様性に魅せられて
出逢いに心惹かれたもの
生き物好きと多様性好み
江戸の粋人も楽しんだ花の多様性
荒川のサクラソウ自生地のその後
大正期に天然記念物に
今、野生のサクラソウは
悲しい自生地
2章 プリムラとサクラソウ
サクラソウ科とプリムラと
プリムラの起源地
プリムラの原始的・派生的形質
日本のプリムラの仲間たち
園芸植物としてのプリムラ
3章 時空のはざまをぬって ―― サクラソウの生活史
芽生えるタイミングを計るたね
二次元成長するクローン植物
肉眼で見分けられるクローン
落葉樹林のサクラソウの光条件
クローン成長によって無性的に生き続ける
4章 花は誰のために咲くのか
ヒトにとって花は
緑でない器官は居候
適応形質としてみた花の形質
圧倒的な両性具有の世界
他殖と自殖
必要な二種類のパートナー ―― 配偶者と花粉の運び手
花が気を引こうとするのは
5章 瞳の秘密
どちらの瞳がお好き? ―― タイプは二つ
瞳の違いを読む ―― ダーウィンに始まる研究
パートナー確保のために進化と崩壊を繰り返す
6章 絶滅が忍び寄る
森や湿原が陸の孤島となってゆく
生育場所の分断・孤立化はなぜ絶滅をもたらすか
気づかないうちに忍び寄る絶滅
種子生産を制限するもの
ポリネータを失った個体群に予想される未来
7章 消えたパートナーを追う
パートナーの昆虫を探して
訪花昆虫とポリネータ
有効なポリネータは植物の成長様式によって多種多様
ついにパートナーをみつける
花粉の見事なつき分け
つめあとは語る
サクラソウの種子生産が映すもの
サクラソウの存続を許す景観
失われたパートナーを取り戻すために
ポリネータセラピーに向けて
8章 サクラソウをめぐる生き物のネットワーク
種子生産に影響する生物因子を洗い出す
植物を食べる虫の害
ちょっと迷惑な居候、ハナムグリハネカクシ
クロホ病と奇妙な酵母 ―― 「等花柱花がいっぱい」の謎
サクラソウの保全と未来
9章 地球環境と生物多様性、そして保全生態学
ヒトが進化しなかったとしたら
ヒトによる地球環境の改変
生物多様性は地球環境のバロメータ
地球環境と人類の関係をたとえてみると
掌中の玉? となった地球をどうするか
生物多様性とは何か
新しいパラダイムの誕生
階層性を含む生物多様性の概念
生物多様性の喪失が意味するもの
生物多様性の危機の評価 ―― レッドリストの種
10章 なぜ生物多様性を守るのか
生物多様性と生態系の機能・安定性
機能と多様性に関する四つの仮説
とりあえずの安全な方針
生物多様性の価値
目標としての生物多様性
「原生的な自然の保護」から「生物多様性の保全」へ
エピローグ ―― ヒトの目、サクラソウの目
あとがき
参考文献
索引
著者紹介
●COLUMN
特別天然記念物田島ヶ原サクラソウ自生地
英国のプリムラ
サクラソウの種子を人工的に発芽させる
自然選択による進化と適応度
近交弱勢が起こる仕組み
異型花柱性
ダーウィン、死んだハチで実験する
生理的自家不和合性
他殖促進の仕組みとしての異型花柱性はどのように進化してきたか?
スーパージーンモデルを用いたシミュレーションによるサクラソウの未来
いろいろな水準のポリネータ利用性と近交弱勢を仮定したとき、
長花柱型、短花柱型、および等花柱型の頻度はどう変化していくか?
盗人からパートナーへ
ちっぽけなサル発見! ―― 未知の霊長類
「キーストーン種」とは?
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