独創を阻むもの

哲学不在と没個性
表紙
永田 親義著

ISBN4-8052-0477-X

四六判

255頁/\1,600+税



概要

日本人の独創性や創造性について論じた本は多いが,その中には本質を離れて方法論や技術論に偏ったものが多い.独創を生み出す最も正統的な道は,学問の基本に立ち返り,古代ギリシャの精神を受け継いだ西欧科学の伝統の中で語られてきた先哲の言葉に謙虚に耳を傾けることにある.

目次

第1章 日本人と科学
 日本人にも科学ができるか
 日本人に科学的独創性があるか
 定義を曖昧にする
 現実直視を避ける
 評価に関する基礎データ
 ノーベル賞
 法則の発見
 第三者の評価
 議論のすり替え

第2章 なぜ独創性に欠けるか
 哲学不在と没個性
 哲学への誤解
 哲学の必要性

第3章 欧米における哲学の尊重
 科学の創造と哲学
 哲学と科学の一体化
 近代科学の源流はギリシア

第4章 創造性とギリシア哲学
 ギリシア哲学の特徴――科学性
 論理性
 自由性
 数学の尊重

第5章 中国になぜ近代科学が生まれなかったか――ギリシアとの比較
 自然認識の相違
 方法論の違い
 感覚への信頼
 自由に対する考え方
 地理学上の位置
 中国と日本の類似と差異

第6章 ユダヤ人の独創性は何によるか
 歴史を創ったユダヤ人
 天才輩出の秘密

第7章 日本になぜ独創的研究が少ないか
 役に立つ研究への指向
 実学と虚学
 孤独を恐れる
 流行に乗る研究
 主流につきたがる
 扇の要よりもきれいな絵を
 真似をする研究
 広い視野とゆとりに欠ける
 厳しい批判の欠如
 勲章を欲しがる学者たち
 独創を阻む制度

第8章 独創的研究と日本の社会的風土
 役に立つ研究を求める社会
 和をもって貴しとなす
 討論のない社会

第9章 創造性と個性の確立
 画一性
 没個性
 天才が育ちにくい
 本音と建前の区別
 恥の文化と世間体の哲学
 自由の意識
 部分と全体

 あとがき
 引用文献