<毒性試験講座 1>

安全性評価の基礎と実際

表紙
福田 英臣編
林 裕造編
和田 攻他編

ISBN4-8052-0320-X

B5判

頁/\6,117+税



概要

本講座は420名におよぶ第一線の研究者の学際的な協力により,トキシコロジーを最新の視座から体系化し,基礎から実際までを具体的に解説した.1〜3までを「総論」とし,毒性試験の企画,実施,成績の評価に必要な一般的問題と4〜18に入れにくい事項について解説.また,この部門は,毒性試験に直接関与しない人々にも好個の参考になるので,特に記述を平易にした.4〜14までは「基本理論と技術」とし,各試験法の理論的解説と,個々の具体的な手法を専門分野別に記述.15〜18までは「毒性評価の実際」とし,1〜14を基礎にして,与えられた被験物質について毒性試験を企画,実施し,その結果を評価する際の問題点を具体的に解説した.

目次

I 安全性評価と毒性学

1 毒性学とは

2 毒性研究の種類

3 毒性研究の方法

4 毒性試験
 4.1 毒性の概念
 4.2 毒性試験の種類
  4.2.1 局所作用と吸収作用
  4.2.2 投与期間
  4.2.3 生活環境と毒性試験
  4.2.4 一般毒性試験と特殊毒性試験
  4.2.5 生体内動態と毒性
 4.3 GLP 規制と毒性試験法ガイドライン

5 毒性研究の計画
 5.1 試験/研究の手順
 5.2 試験/研究計画の原則(1)――目的の認識
 5.3 試験/研究計画の原則(2)――総合評価への配慮
 5.4 試験/研究計画の変更
 5.5 第1相臨床試験に入るための前臨床試験の計画
  5.5.1 すべての薬物に対して共通に必要とされる試験
  5.5.2 特定の種類の薬物に必要とされる試験

6 毒性試験の評価
 6.1 技術面の評価
 6.2 動物実験レベルでの評価
 6.3 ヒトに対する影響の評価
 6.4 総合評価
  6.4.1 リスクアセスメント
  6.4.2 一般毒性試験における有害性確認
  6.4.3 用量反応評価の実際
  6.4.4 動物実験データのヒトへの外挿

7 毒性学の将来課題
 7.1 記述から解析へ
 7.2 解析から統合へ

II 安全性研究の方法と技術

1 薬理学
 1.1 安全性と毒性学・薬理学研究
  1.1.1 安全性評価の必要性
  1.1.2 研究対象とする化学物質
  1.1.3 安全性評価の意義
  1.1.4 動物実験成績からヒトへの外挿
  1.1.5 毒性学の研究範囲
  1.1.6 化学物質の有害性の薬理学的メカニズムと安全性評価
  1.1.7 化学物質の用量と生体の反応
  1.1.8 医薬品の有害反応
  1.1.9 毒性発現物質の体内動態
  1.1.10 化学物質の薬物依存と耐性
 1.2 医薬品開発における毒性試験
  1.2.1 薬理学的立場からみた毒性試験の意義
  1.2.2 毒性試験成績の評価
  1.2.3 毒性試験における薬物適用量
  1.2.4 現行の毒性試験の問題点
  1.2.5 機能毒性試験の重要性
 1.3 安全性評価における一般薬理試験の位置づけ
  1.3.1 一般薬理試験の意義
  1.3.2 現行の一般薬理試験の問題点
  1.3.3 一般薬理試験と安全性試験
 1.4 薬物の薬理作用の選択性
  1.4.1 薬物受容体の薬理作用発現における意義
  1.4.2 薬物受容体を介する薬理作用発現の機序
  1.4.3 薬物の薬理作用の選択性に関する要因

2 病理学
 2.1 病理学の技術と方法
  2.1.1 病理学の毒性研究
  2.1.2 病理学の種類
  2.1.3 病理形態学の方法
 2.2 病理学検査のありかた
  2.2.1 病理検査の特徴
  2.2.2 病理検査の対象
  2.2.3 病理所見の定量化
  2.2.4 病理検査の限界
 2.3 病変分類
  2.3.1 病理形態学の立場からの病変分類
  2.3.2 毒性評価の立場からの病変分類
 2.4 病理検査の実際
  2.4.1 剖検
  2.4.2 病理組織学的検査
  2.4.3 特殊検査
  2.4.4 報告書の作成

3 生化学
 3.1 個体レベルでの試験
 3.2 臓器レベルでの試験
  3.2.1 In vivo
  3.2.2 In vitro
 3.3 細胞レベルでの試験
  3.3.1 単離細胞
  3.3.2 培養細胞
 3.4 毒性発現のメカニズム
  3.4.1 脂質過酸化、フリーラジカル生成
  3.4.2 共有結合
 3.5 器官レベルでの試験
  3.5.1 肝臓
  3.5.2 腎臓
  3.5.3 肺
 3.6 無細胞系での試験
  3.6.1 細胞内小器官
  3.6.2 細胞下分画法

4 代謝化学
 4.1 生体内における化学物質の代謝
 4.2 化学物質の代謝型式
 4.3 化学物質自体による毒性発現
 4.4 特殊な代謝物による毒性発現
 4.5 反応性代謝中間体による毒性発現
 4.6 反応性代謝中間体の検出法
 4.7 単離肝細胞を用いての反応性代謝中間体の生成と細胞毒性の検出法
 4.8 反応性中間体生成の種差
 4.9 化学物質の毒性の性差とチトクローム P-450

5 免疫学
 5.1 免疫毒性の基礎概念
  5.1.1 免疫系標的器官・組織に直接的、間接的に
      影響を与えることによって発生する毒性
  5.1.2 免疫応答系を介して誘発する毒性
 5.2 免疫系を構成する細胞
  5.2.1 抗原提示細胞
  5.2.2 T 細胞と B 細胞
  5.2.3 T 細胞と B 細胞の鑑別
  5.2.4 Null 細胞
  5.2.5 免疫応答を伴う他の細胞
 5.3 免疫毒性化学物質による免疫毒性変化とその検出
  5.3.1 実験動物を中心とした試験方法
  5.3.2 免疫毒性試験法の例
 5.4 免疫応答系を介した免疫毒性変化とその検出
  5.4.1 被験医薬品
  5.4.2 試験方法
  5.4.3 皮膚感作性試験
 5.5 重金属の免疫能に及ぼす影響
 5.6 農薬、殺虫剤の免疫系に及ぼす影響

6 発生学
 6.1 発生学の概念
  6.1.1 発生学の定義
  6.1.2 発生学と関連する生物学の分野
  6.1.3 発生学と毒性学の関係
 6.2 生殖子発生
 6.3 受精から着床まで
 6.4 肺葉形成
 6.5 胚子(胎芽)期の発生
 6.6 胎膜・胎盤の発生
 6.7 胎児期の発生
 6.8 生後発生
 6.9 発生の機構
  6.9.1 肺細胞の特性
  6.9.2 分化と成長
  6.9.3 形態形成運動
  6.9.4 上皮間葉相互作用
 6.10 発生学実験法

7 遺伝学
 7.1 変異原性
  7.1.1 突然変異
  7.1.2 ヒトへの評価
 7.2 がん原性との関係
  7.2.1 がん原性と染色体異常
 7.3 変異原性試験の多様性
  7.3.1 微生物を用いる系
  7.3.2 培養細胞を用いる in vitro 系
  7.3.3 哺乳類を用いる in vivo 系
  7.3.4 昆虫を用いる系
  7.3.5 その他の系

8 実験動物学
 8.1 動物実験成績に影響する要因
 8.2 遺伝要因として留意すべき事項
  8.2.1 動物種
  8.2.2 系統または品種
  8.2.3 動物の性
  8.2.4 動物の日(月、年)齢
 8.3 環境要因として留意すべき事項
  8.3.1 発育環境
  8.3.2 近隣環境
 8.4 動物実験の倫理

III 毒性試験の実際

1 毒性試験実施の前提

2 試験計画書
 2.1 試験の目的
 2.2 試験の対象
 2.3 試験各条の設定
 2.4 試験計画書作成の手順

3 試験の実施
 3.1 毒性試験実施の原則
 3.2 設備・機器の管理
 3.3 プロジェクト会議
 3.4 被験物質
 3.5 実験動物
 3.6 記録
 3.7 検査と検査試料
 3.8 事故
 3.9 データ処理

4 試験報告書
 4.1 試験報告書記載事項
 4.2 試験報告書に記載すべき範囲
 4.3 試験報告書作成の手順

5 資料の整理と保管

IV 実験動物からヒトへの外挿

1 総論
 1.1 外挿のための基礎知識
  1.1.1 ヒトへの外挿とは
  1.1.2 動物種差の性格の理解
  1.1.3 比較実験動物学的検討の必要性
  1.1.4 多種類動物データの比較検討の問題点
  1.1.5 外挿のための比較動物学的検討の前提
  1.1.6 年齢変化のもつ外挿における意義
  1.1.7 代謝の速度の差と動物種差
  1.1.8 組織構造の質的差異と物質移行の種差
  1.1.9 外挿の方法論
  1.1.10 外挿の具体的ステップ

 1.2 外挿のための実験動物学
  1.2.1 安全性試験の種類
  1.2.2 安全性試験成績の評価とヒトへの外挿上の問題点
  1.2.3 実験動物からヒトへの外挿のための戦略
  1.2.4 外挿のための実験動物とその biological data
       ――特にホルモンを中心として――
  1.2.5 外挿のための新しい実験動物の開発
  1.2.6 今後の展望

2 各論
 2.1 急性毒性試験
  2.1.1 急性動物実験値の外挿に影響する因子
  2.1.2 定性的な予測
  2.1.3 定量的な外挿
  2.1.4 急性毒性値外挿の新しい方法の試み
 2.2 亜急性・慢性毒性試験
  2.2.1 現在のガイドラインと実験動物
  2.2.2 外挿上の問題点
 2.3 発がん性の外挿
  2.3.1 動物における発がん性の検出
  2.3.2 抗悪性腫瘍剤と発がん性
  2.3.3 ホルモンおよびホルモン類似物質
  2.3.4 プロラクチンと乳腺腫瘍
  2.3.5 TSH と甲状腺腫瘍
  2.3.6 胃酸分泌抑制剤とカルチノイド腫瘍
  2.3.7 ペルオキシゾーム増生と肝腫瘍
  2.3.8 トリプシンインヒビターと膵腺房細胞腫瘍
  2.3.9 薬物代謝酵素誘導とマウス肝腫瘍
  2.3.10 β−アドレナリン受容体刺激剤と卵巣間膜腫瘍
  2.3.11 高カルシウム血症と副腎髄質腫瘍
  2.3.12 げっ歯類の膀胱腫瘍
  2.3.13 異物発がんと皮下腫瘍
 2.4 発生毒性試験
  2.4.1 実験動物とヒトにおける発生毒性の対応関係
  2.4.2 ヒトと実験動物の胎児の感受性
  2.4.3 発生毒性に関する動物種差の原因
  2.4.4 発生毒性データの評価
  2.4.5 ヒトへの外挿とその問題点
  2.4.6 現行試験法と代替スクリーニング法の意義
 2.5 機能毒性試験
  2.5.1 「機能毒性」とヒトへの外挿の問題点
  2.5.2 神経作用の研究例
  2.5.3 代替法を用いた機能毒性試験と外挿
 2.6 免疫毒性試験
  2.6.1 免疫毒性とは
  2.6.2 免疫毒性のヒトへの外挿の問題
  2.6.3 抗原性試験
  2.6.4 免疫系に対する促進、抑制、変調作用を伴う毒性
  2.6.5 ヒト遺伝子組換えたん白製剤の安全性の予測
 2.7 薬物依存性試験
  2.7.1 外挿に必要な薬物依存の基礎知識
  2.7.2 外挿の一般的原則
  2.7.3 依存性試験実施以前の外挿
  2.7.4 動物依存性試験成績の読み方
  2.7.5 動物依存性試験成績のヒトへの外挿
  2.7.6 被乱用性および乱用弊害の予測
 2.8 吸収・分布・代謝・排泄試験
  2.8.1 毒性試験関連の吸排試験法
  2.8.2 毒性試験関連の吸排試験の特性
  2.8.3 体内動態の実験動物からヒトへの外挿

 索引