地人選書26>

時間の矢

表紙
リチャード・モリス著
荒井 喬訳

ISBN4-8052-0252-1

四六判/320頁

\2,400+税



概要

時間とは一体何なのか.季節ごとに巡り来るものなのか,それとも永遠に不可逆的に続くものなのか.科学者や哲学者を悩まし続けてきたこれらの疑問を,著者は,西欧型の思考を特徴づけるものとして位置づけ,それに対する主要な考え方と,その魅惑的な全体像を提示する.

目次

第1章 時間とは何か
 時間の問題への問いかけ
 時間の観念の歴史的変遷

第2章 循環的時間と直線的時間
 天体の運行と循環的時間
 循環的時間から直線的時間へ
 中世における時間の観念

第3章 抽象的時間
 時計の発達と社会への影響
 中世の自然学と物体の運動
 ガリレオと落体の運動
 落体運動の数学的定式化

第4章 微積分と決定論の観念
 瞬間速度と無限小の概念
 ニュートンの運動法則
 微積分と決定論的宇宙
 決定論の論拠と物理法則

第5章 過去の発見と進歩の観念
 聖書年代学と世界の年齢
 デカルトとライプニッツ
 化石記録と地質学的時間
 ダーウィンと進化の理論
 進化の観念と進歩の思想

第6章 世界の年齢
 ケルヴィンと地球の年齢
 地球の年齢をめぐる論争
 放射性年代決定法の発展
 ハッブルと宇宙の膨張
 宇宙の年齢を求めて

第7章 エントロピーと時間の方向
 熱の流れを支配する法則
 孤立系のエントロピー
 エントロピーと第二法則
 時間を逆向きに進む粒子
 統計的ゆらぎと時間の矢

第8章 五つの時間の矢
 K 中間子の時間非対称性
 時間を逆向きに伝わる波
 時間反転の波と宇宙の膨張
 物理学の時間と心理的時間

第9章 相対論的時間
 特殊相対論における時間
 光の速さと同時性の概念
 時間の伸びと質量増加
 長さの短縮と時空の概念

第10章 宇宙時間
 曲がった空間の幾何学
 一般相対論と四次元時空
 ブラック・ホールと時間
 一般相対論の実験的確認

第11章 時間の始まりと終わり
 宇宙のビッグ・バン起源
 宇宙創成最初の3分間
 ビッグ・バン理論の問題点
 グースの急膨張宇宙理論
 宇宙の未来へのシナリオ

第12章 時間とは何か
 収縮宇宙における時間
 振動宇宙における時間

 訳者あとがき
 邦訳文献
 参考文献
 索引