地人選書13>

火山と冷夏の物語

表紙
H.ストンメル著
E.ストンメル著
山越 幸江訳

ISBN4-8052-0221-1

四六判/240頁

\1,800+税



概要

インドネシアのタンボラ山は,記録に残っているだけで1614年,1752年などに噴火しており,1815年のそれは,過去1万年の間で最大の噴火と考えられている.著者ストンメル夫妻は,この大噴火の影響を,さまざまな情況証拠から浮かび上がらせている.

目次

第1章 世界中の気温を下げた火山噴火
     ――タンボラ山の噴火――
 轟音と噴火
 イギリス人の総督が調査を命じる
 スンバワ島の惨状
 火山灰が降った区域
 浮かぶ軽石の小島
 過去1万年で最大級の噴火とランクされたタンボラ山
 1847年から1981年に山頂の火口の縁に登った人々

第2章 「1816――凍死――年」
     ――ニューイングランド地方の寒い夏――
 ニューイングランドの大学に残る気象の記録
 農夫ハーウッドが雪あらしに驚く
 プルーマー州知事のあらしの日の就任式
 バーモント州北部の新聞記事
 7月の寒波
 トウモロコシの不作
 8月の寒波
 トウモロコシを救う対策
 ニューハンプシャー州中部の不作
 ニューヘブンで1816年に降霜のない期間を平年と比較する

第3章 ヨーロッパに広がった飢饉
     ――寒くジメジメした夏の置土産――
 ヨーロッパの農民の惨状
 アイルランドの飢饉と発疹チフスと6万5000人の死者
 ナポレオン戦争の終結
 ブドウの取り入れ期が大幅に遅れる
 スイスの飢饉
 チューリッヒの飢えた民衆
 アルプスの山賊が非常用の穀物輸送車を襲う
 フランス政府が食料を支給する
 1917年春の暴動
 中国や日本の記録

第4章 苦闘する農場の生活
     ――悪天候は自給自足の農民にどんな影響を与えたか――
 人々の暮し向き
 1816年の米国の人口
 工業が発達する前
 河川と道路
 ティモシー・ドワイト牧師がニューイングランド地方を旅行する
 ロッキー山中の道と夜の狼
 自耕自給農場の生活
 農場から得られる産物
 羊ブーム
 仕事の分担
 農場の森林

第5章 ニューイングランド地方の災害の実状
     ――トウモロコシの不作――
 インディアンコーンと農場の経済
 ニューイングランド地方のトウモロコシの歴史
 トウモロコシは最北端の産地で最もよく成長する
 現在でもアメリカの主要作物であるトウモロコシ
 主に家畜の飼料として利用されたトウモロコシ

第6章 1816年の収穫
     ――災害の警鐘と被害報告――
 統計の不足
 農夫ハーウッドは冷夏を巧みに乗り越える
 カナダの深刻な食料難を報道する新聞記事
 ニューヨーク市が貧民に食料を支給する
 フィラデルフィア農業振興会とアンケート
 サムエル・ミッチェル博士から寄せられた報告
 ハンフリー将軍から寄せられた報告
 保護管理論の先駆者、ノア・ウェブスター
 野鳥の保護の訴え
 前年の冷夏に気づかないトーマス・コベット

第7章 鯖の年
     ――食料価格の暴騰――
 1808年から1825年のニューヨークにおける小麦相場
 フィラデルフィアにおける小麦粉の価格の暴騰
 不足する家畜の飼料
 豚肉と牛肉の価格の下落
 インフレにもかかわらず100年以上安定していた小麦の価格
 町の労働者には高くつく食料
 カナダはウィスキーの蒸留製造を禁止する
 休会中のアメリカ連邦議会
 1816年の夏の間の雑多な政治問題
 国会に嘆願書が提出される
 エリー運河建設の着工
 国会がようやく対策に乗り出す
 モリル法

第8章 苦闘する農場からの脱出
     ――西部への移民――
 土地の不足
 移住に駆りたてたもの
 バーモント州の場合
 人口統計のデータ
 オクラホマ州黄塵地帯の移民と1816年のそれとを比較する
 移住の形態
 土地ブーム
 移住を思いとどまらせる努力

第9章 大げさな言い伝え
     ――民間伝承――
 土地の歴史を物語る民話
 凍死した男
 足の親指を失った男
 事実に尾ひれをつける
 祖父ホプキンス
 自殺事件
 羊の屠殺
 食うや食わずの生活
 旧農事暦が評判になったわけ

第10章 コレラの流行
     ――1816年の冷夏とコレラの流行の間に間接的なつながりがあるか?――
 コレラの症状
 1816年以前はコレラの流行地はアジアに限られていた
 イギリスの軍隊がコレラを世界に広げる
 メッカ巡礼者への感染
 コレラ、カスピ海沿岸に到達する
 アレクサンドル1世のコレラ対策
 コレラをロシアの仕組んだ細菌戦争と主張するポーランド人
 死者を埋葬しきれないパリ
 フランスの首相、コレラで死亡する
 メッカにおける死亡数、5万人
 停船条令をしいたニューヨーク市で毎日100人の死者がでる

第11章 避雷針原因説と太陽黒点説
     ――誰が気候変動の原因を知っているのか?――
 人々を驚かせた1816年の太陽黒点
 地球は地電流で温められる
 氷山増大説
 メキシコ湾流がそれたという説
 ベンジャミン・フランクリンの名察
 天候の記録文書を作る努力
 初期の気温測定
 温度計の発達
 年輪とさんご礁
 古い時代のデータと新しい時代のデータ
 火山原因説
 近代の気温測定表
 過去200年間の気温の傾向
 記録の解釈の難しさ
 「小氷河期」
 気候と太陽黒点
 偶発的な気候の変動
 「ダストベール指数」
 コンピュータによる気候のシミュレーション
 1963年のアグン山の噴火
 古い時代を探る代表的なデータ
 グリーンランドの氷塊に刻まれた記録
 セントヘレンズ山と気候
 1982年のエルチチョン山の噴火

第12章 記録についての私的な見解
     ――自分で判断してみよう――
 気温
 太陽黒点
 二つの期間の火山の記録
 なぜ気候学者の意見が一致しないか

第13章 因果関係を究明する
     ――過去を振り返った「因果関係説」――
 1816年の冷夏
 冷夏の経済的そして社会的な帰結
 ヨーロッパとニューイングランド地方の比較
 科学的な理論
 化石燃料から発生する大気中の汚染物

 覚え書きと参考文献
 謝辞
 訳者あとがき
 さくいん