トキシコロジー

毒理学の基本的問題点とその実際
表紙
浦口 健二編著
上野 芳夫編著
粕谷 豊他編著

ISBN4-8052-0104-5

B5判/1436頁

\43,000+税



概要

生理学・生物学・薬理学・病理学・解剖学・衛生学・薬学・その他関連諸分野の第一線研究諸家百十余名の学際的協力によって,作用物質に対する生体側の反応,引き起こされる機能障害の追及およびその機序を解明し,体系化を試みた,画期的な生物学的トキシコロジー,毒理学の集大成.

目次

第I編 総論

1 毒理学序説

 1.1 外来物質の生体作用の追求
  分化する専門科学トキシコロジーとその科学情報
  作用・反応・機能変化とその意味するもの
  死のベクトルの生体作用
 1.2 毒性試験の基本的考え方
 1.3 毒性の否定
  指標の選択と適格性
  毒性情報が出揃うまでは
  検体指標の片寄り
  毒性試験を代表する指標
  毒性の見落し
  指標所見の否定と毒性知見の否定
 1.4 否定されるべき毒性
  毒性の多様性
  不明有毒物質の氾濫
  毒性試験の検体は未確認毒性物質
  毒性試験の活動目標
  毒性試験の展開の実態
  毒性試験は未確認毒性見のがし試験
 1.5 安全性の推定
  人の毒性の知見を求めて
  動物からの翻訳
  実証的知見と非実証的知見
  翻訳は無理
  人の毒性は推理的知見
  外挿の推理に伴うジレンマ
  外挿展開の鍵
  人の毒性情報系の特質
 1.6 毒性の確認と管理
  毒性試験で合格した薬品類はみな確認毒性試験
  不合格になった薬品類こそは確認毒性物質の主流派
  一般化学物質と毒性管理の実状
  毒性の社会的な自由放任主義は放任すべきや
  一般化学物質の増加は未確認毒性物質の増加
  毒性情報の不備・不足の裏にあるもの
 1.7 化学物質の生体障害作用
  一般化学物質を2群に分ける――生体同質群と異質群
  生体異質群の生体障害作用または毒性
  おびただしい未確認毒性物質の正体は何か
  生体障害作用《毒性》の普遍的存在の可能性
  生体に無作用の物質は存在するか?
  生体同質・異質両群の生体作用
  一般化学物質における毒性の普遍性
  万有毒性論

2 毒理学の基本的問題点

 2.1 生体内の化学物質
  2.1.1 吸収、排泄
  2.1.2 体内分布
  2.1.3 薬物の代謝
  2.1.4 薬物の半減期
  2.1.5 胎盤通過性
 2.2 生体の反応
  2.2.1 生理機能の変調・障害・破綻
  2.2.2 急性毒性・慢性毒性
  2.2.3 胎児障害――発生過程の胎児に対する発がん物質の遅発性障害
  2.2.4 突然変異性
  2.2.5 生物的濃縮
  2.2.6 アレルギー
  2.2.7 依存性
 2.3 反応を左右する生体側の条件
  2.3.1 動物の種差(種族・系統・個体)
  2.3.2 性差・年齢差
  2.3.3 環境差
  2.3.4 薬物に対する反応性の遺伝的個人差

第II編 各論

1 臓器の障害性

 1.1 中枢神経系
  1.1.1 運動系
  1.1.2 薬物による呼吸興奮ならびに麻痺発生の機序
  1.1.3 情動
  1.1.4 モルヒネ類の中毒学的研究
  1.1.5 覚醒剤中毒
  1.1.6 脊髄(脊髄に及ぼす薬物の中毒学的考察)
 1.2 視覚器(眼組織に及ぼす薬物の中毒学的考察)
  1.2.1 視覚器の範囲、構造と特長
  1.2.2 医薬品の視覚系への影響の臨床検査
  1.2.3 医薬品による視機能障害の現状
 1.3 聴覚器(耳毒性物質の作用機序)
  1.3.1 アミノ配糖体抗生物質の耳毒性
  1.3.2 アミノ配糖体抗生物質の内耳への侵入
  1.3.3 作用部位についての考察とまとめ
 1.4 末梢神経系
  1.4.1 神経節(節遮断薬の作用機序)
  1.4.2 アドレナリン作動性神経系
 1.5 肝臓
  1.5.1 薬物による肝機能障害発生機序
  1.5.2 胆汁生成に及ぼす薬物の作用
 1.6 腎臓
  1.6.1 糸状体の障害
  1.6.2 尿細管障害
 1.7 循環系
  1.7.1 心臓機能障害物質
  1.7.2 心筋代謝障害
  1.7.3 冠血流に及ぼす薬物の作用
  1.7.4 末梢血流に及ぼす薬物の作用
  1.7.5 末梢血管における透過性に及ぼす薬物の作用
  1.7.6 末梢血管における透過
 1.8 膵臓
  1.8.1 実験的糖尿病惹起物質(1)
  1.8.2 実験的糖尿病惹起物質(2)
  1.8.3 ビグアナイド剤
  1.8.4 スルフォニール尿素剤
 1.9 胃腸
  1.9.1 薬物の副作用としての胃腸障害
  1.9.2 胃腸障害誘起化合物
 1.10 平滑筋の収縮と弛緩
  1.10.1 平滑筋の収縮――弛緩機構の特質
  1.10.2 平滑筋の収縮――弛緩に対する薬物効果
  1.10.3 平滑筋の毒物学
 1.11 血液
  1.11.1 造血臓器ならびに血球に及ぼす薬物の障害作用
  1.11.2 血液凝固と薬物
 1.12 内分泌系
  1.12.1 副腎皮質に対する薬物の障害作用
  1.12.2 甲状腺に及ぼす薬物の障害的作用
  1.12.3 性腺に及ぼす薬物の障害的副作用
 1.13 神経筋接合部および骨格筋に対する化学物質の障害的作用
  1.13.1 神経筋接合部に対する作用
  1.13.2 骨格筋に対する作用
 1.14 硬組織
  1.14.1 実験的ビタミン D の欠乏症
  1.14.2 骨代謝に及ぼす aminonitrile の障害作用――Osteolathyrism
  1.14.3 硬組織における calcium 沈着と薬物
 1.15 皮膚、粘膜、毛髪、爪に及ぼす化学物質の障害作用
  1.15.1 皮膚障害
  1.15.2 粘膜、毛髪、爪の障害

2 細胞機能の障害性
 2.1 生体膜
  2.1.1 膜透過と障害性および防御機構
  2.1.2 機能と構造
  2.1.3 ヒキガエル膀胱膜の透過性と薬物の作用
  2.1.4 腸管吸収に対する薬物の作用
 2.2 細胞核機能障害性物質の作用機序
  2.2.1 核構造に対する作用
  2.2.2 核構成高分子に対する作用
 2.3 細胞障害における小胞体の役割
  2.3.1 小胞体の機能
  2.3.2 粗面小胞体の機能
  2.3.3 Ribosome・Polysome 障害
  2.3.4 小胞体膜の障害
 2.4 ミトコンドリア機能の阻害剤
  2.4.1 ミトコンドリアの機能: 酸化的リン酸化
  2.4.2 膜構造の必要性
  2.4.3 酸化的リン酸化阻害剤の分類
 2.5 細胞障害におけるライソソームの役割
  2.5.1 ライソソームとその機能
  2.5.2 感染時におけるライソソームの役割
  2.5.3 ライソソームと蓄積病
  2.5.4 ライソソーム酵素の細胞質内漏出と細胞障害
  2.5.5 ライソソーム酵素の細胞外放出と障害
  2.5.6 ライソソームから治療への応用

3 細胞の微細構造の障害性
 3.1 肝
  3.1.1 反応の場としての肝組織(細胞の微細構造)とその病状の意味するもの
  3.1.2 肝の電顕所見の資料的評価
 3.2 軸索流と薬物
  3.2.1 軸索流について
  3.2.2 薬物による軸索流の阻害
  3.2.3 薬物による微小管構成の阻害
  3.2.4 In situ への推察
 3.3 化学物質および薬物による腎臓の超微構造障害
  3.3.1 糸状体の変化
  3.3.2 尿細管の変化

4 障害化合物
 4.1 重金属
  4.1.1 有機水銀
  4.1.2 カドミウム(Cd)中毒
  4.1.3 ヒ素
  4.1.4 鉛(体内における解毒型鉛の組織薬理学的研究)
 4.2 食品添加物(リストから除外されたものも含めて)
  4.2.1 サイクラミン酸
  4.2.2 人工着色料
  4.2.3 フェノール性安息香酸
  4.2.4 亜硝酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム
 4.3 農薬
  4.3.1 公害病としての農薬中毒
  4.3.2 農薬の生体影響に関する研究
      ――最近の日本農村医学会の調査を中心に――
  4.3.3 人体内に残留し続ける水銀と有機塩素剤
  4.3.4 有機リン農薬による慢性中毒の臨床
 4.4 洗剤
  4.4.1 洗剤の毒性
  4.4.2 界面活性剤の細胞膜に対する作用
 4.5 大気汚染物質
  4.5.1 大気汚染物質の種類
  4.5.2 大気汚染の現況についてのあらまし
  4.5.3 大気汚染物質の毒作用
 4.6 天然物
  4.6.1 植物毒
  4.6.2 動物毒
  4.6.3 細菌毒素
 4.7 Mycotoxin
  4.7.1 総論
  4.7.2 ペニシリウムかび毒
  4.7.3 アスペルギルスかび毒
  4.7.4 フザリウムかび毒
  4.7.5 その他のかび毒
 4.8 その他
  4.8.1 PCB
  4.8.2 四塩化炭素(CCl4)
  4.8.3 一酸化炭素(CO)中毒

5 障害性の検索法
 5.1 急性毒性
  5.1.1 動物
  5.1.2 検体
  5.1.3 観察
 5.2 亜急性毒性
 5.3 慢性毒性
  5.3.1 動物
  5.3.2 検体
  5.3.3 検査
 5.4 発がん性
  5.4.1 検索物質の準備
  5.4.2 実験動物の選択
  5.4.3 飼育条件
  5.4.4 投与方法および投与量
  5.4.5 実験期間
  5.4.6 動物の検索方法
  5.4.7 結果の評価
 5.5 催奇形性
  5.5.1 化学物質の生殖に及ぼす影響
  5.5.2 生殖試験法の変遷
  5.5.3 生殖試験法の概説
  5.5.4 生殖試験法の企画
  5.5.5 動物種
  5.5.6 動物の交配と妊娠の判定
  5.5.7 投与経路
  5.5.8 投与量
  5.5.9 対照
  5.5.10 投与期間
  5.5.11 検索方法
  5.5.12 評価
  5.5.13 関連するその他の試験
  5.5.14 ヒトにおける検索方法
 5.6 繁殖障害性
  5.6.1 繁殖試験
  5.6.2 単世代繁殖試験
  5.6.3 多世代繁殖試験
  5.6.4 試験方法
  5.6.5 その他
 5.7 依存性
  5.7.1 検索の目的
  5.7.2 検索指標
  5.7.3 ヒトにおける依存性検索の問題点
  5.7.4 動物における依存性検索の問題点
  5.7.5 投薬条件および個体差の問題
  5.7.6 動物実験における依存性検索法
  5.7.7 依存性評価の問題点
 5.8 アレルギー
  5.8.1 即時型検査法
  5.8.2 遅発型検査法
 5.9 刺激性(皮膚、粘膜)
  5.9.1 皮膚に対する一次刺激性試験
  5.9.2 皮膚刺激性試験法の問題点
  5.9.3 粘膜一次刺激性試験
  5.9.4 眼粘膜刺激性試験の問題点
 5.10 変異原性
  5.10.1 突然変異の分類
  5.10.2 化学物質の突然変異性検出に用いられる方法
  5.10.3 代謝活性化
  5.10.4 ヒトに対する変異原性の検討
 5.11 細胞毒性
  5.11.1 細胞培養法
  5.11.2 細胞毒性に影響を与える因子
  5.11.3 検体の投与法
  5.11.4 細胞障害検索法

 索引